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田村和也雑想設計室雑感
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田村和也雑想

2018/01/25

受け継がれる家 -5-

その日は、朝から落ち着かない自分がいた。
男性が娘さんご夫婦と一緒に事務所を訪れる日だ。

先日、はじめてその家を見てから、私はリフォームの想像を勝手に膨らませていた。
あの縁側は良かったなー。
そこを間仕切る雪見障子など、古くて良いもの、どこか懐かしい雰囲気を生かしながら、水回りは一新し、使いやすい動線を作らないといけないなあ。
現在の北側にある暗くじめっとした部屋も何とかしないとな。

などなど。
私はその家や敷地の持っている雰囲気にすっかり魅せられていた。
しかしこちらの思いばかり先走ってしまうと、たいてい良いことない。
娘さん夫婦はどんな方達なのだろう。
そうわかりながらも、はやる気持ちを抑えられないでいた。

娘さんご夫婦は男性とその奥さんも一緒に来られた。
簡単な挨拶を早々に、どんな家を希望か、どんな生活をおくりたいか、
今、漠然と抱いている考えをざっくばらんに聞いた。
私は、初めて会うクライアント候補と話をするときは、まず相手の話を聞くようにしている。
なぜ、家を建てようと、リフォームしようと思っているのか。
趣味は?仕事は?出身は?どんな家で育ったのだろう?
なぜ、ますいいに相談に来ていただいたか。
家づくりに直接関係ありそうなことから、一見、そうでないことまで。
雑談程度にいろんなお話を聞きながら、僕たちに何を求められているか。
またクライアントの雰囲気を観察する。
そのうえで、私たちの家づくりや、これまで建ててきた住宅を紹介し、エピソードを交え、私達の人となりをわかっていただけるように努める。

娘さんご夫婦は、好きな家や家具、仕上げ等の写真をいっぱい持ってきて、どのようなテイストが好きかいろいろと話してくれた。
事前に親父さんにそういうものがあったら持ってきてもらいたいと伝えていたこともあってだろう。

「キッチンはこんな感じが好きで、玄関土間は広く自転車なんか置けるといいな」
「あらっ、そういうキッチンは見た目は素敵だけど使い勝手が悪いわよ。」
娘さんの意見に横からお母さんがコメントを加えた。
「いーの!お母さんの家じゃないんだから。」

「床は、・・・タイルは・・・」
「筋トレできるところがあるといいな」
などなど、いろいろな話が出てくるたびに、お母さんのコメントが入る。

「もー、お前は黙ってろよ。」
親父さんが口を開いた。
「そーだよ、しゃべらないって言うから連れてきてあげたんじゃん。」
娘さんからのきついツッコミに、みんながどっと笑った。

お母さんは明るく、話し出すと止まらないこの家族のムードメーカーだ。
旦那さんや子供から都度突っ込まれるその様子は、まるで友達のよう。
まだ、若いご夫婦だけれども、娘さんの旦那さんも遠慮のない様子だ。

あー、いい家庭だな。
これまでぶっきらぼうで、つかみどころがなく思えていた親父さんが急に身近な存在に思えた。
この明るく楽しい家族を見ていると、きっと親父さんは優しく、素敵なお父さんなのだろうと思えてくる。

家づくりをしていると、このクライアントの家は私たちがやるべき、私達しかできないと思える時がある。
おそらく、私の思い込みだろう。
しかし、そんな思いに至らない家は、なるべくならばやりたくない。
建築、特に住宅産業は、クレーム産業だという言葉をよく耳にする。
私たちの手掛けているような家づくりは、大体の部分が、いまだに現場で人の手によって作られている。
その点に関して大げさに言うと、法隆寺を作っていた頃からあまり変わってないのではないかと思えるほどだ。
工場でしかも機械が車を作っているのとはわけが違う。
つまり、クレームをつけようと思えば、いくらでもつけられるのだ。
しかし、それはできたものの出来栄えとは関係のないことが多いように思う。
つまりコミュニケーション不足による行き違いが大きな原因だ。
もちろんそれは家づくりに限らないが、いくら完璧なものができても、クライアントの意図しているものでなければ、それは必要のないものであるし、
多少の不便さや不都合があっても、その過程と必然性を理解いただけていれば、それはかけがえのないものにもなりうる。

クライアントと私たちはお互いを理解し、一緒な目標に向かって歩いて行く。
家ができるまでの道のりは長い。
そして、その後のお付き合いはもっともっと長くなるのだ。

つづく

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