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増井真也日記
田村和也雑想設計室雑感
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田村和也雑想

2017/12/29

受け継がれる家 ‐3‐

「先日の男性、また来られましたよ。」
現場から帰ってくると、スタッフの堤君に声をかけられた。
先日の男性・・・
「ちょい、ちょい、手招きの男性です。」
「あー。
もしかしてまた手招き?」
冗談交じりに聞いてみた。
「そーなんです。また道路から呼ばれました。」
先日の一部始終を傍らで見ていた堤君は、苦笑いをしながら答えた。

話を聞くと男性は、町田分室事務所の近くに古家をもっているそうだ。
植木職人をしているという男性は、仕事で付き合いのあった工務店にリフォームの相談をしたが折り合いがつかず、いつも前の道を通っていて、気になっていた私たちに声をかけたという。

「ところで、折り合いのつかなかった工務店ってどこなの?」
「Z工務店らしいですよ」
Z工務店・・・
それは、近所の老舗工務店だ。
何代も続いているその工務店は、とても立派な構えの事務所、材木置場、モデルルームを持ち、茅葺屋根の古民家をリフォームしたギャラリーまで併設している。
大工などの職人も多数抱えた、見るからに伝統のある工務店にかかわらず、設計事務所でデザインの勉強した後、跡を継いだという社長は、現代的な視点も持ち合わせている。

何を隠そう私は、町田事務所を始める際、まずZ工務店にあいさつに行った。
川口本社で働いているころから、意識していたというか、あこがれていたと言った方が正しいその工務店の傍に、偶然にも事務所を構えることになったからだ。
気持ちは戦線布告、態度はお近づきになれたらという感じで、出来たばかりの町田分室事務所の写真の入ったパンフレットをもって。

「シンプルだけど、かっこいい事務所だね。」
パンフレットを見たZ工務店の社長は言った。
Z工務店の社屋に比べれば、町田分室事務所は掘立小屋のような建物だ。
町田分室を設立する際、その事務所の設計も私に任された。
何もないところから始めるので、事務所はなるべくローコストで建てよう、そうでありながら、これから一緒に家を建てようと思う人に参考になるように。
ご近所の人に、その楽し気な雰囲気が伝わり、ここに工務店ができたことに興味を持ってもらえるような、
そんな、私たちの家づくりを体現しているような事務所にしたいと思って設計した。
その意図が写真から、Z工務店の社長に伝わったかどうかはわからないが、
きっとダンディーとはこういう人のことをいうのだろうと思った。

「また何か一緒にできそうなことがあったらやろうよ」
一通り話をした最後にそんな声をかけられ、その場を後にしたことを覚えている。

その後、Z工務店の社長とは、工務店の集まる会合などで何度かお会いし、軽く話をしたが、仕事で一緒になることはなかった。
通常、注文住宅を検討しているクライアントは、興味のある設計事務所なり、工務店を探し出し、何社かの提案を受けて一緒に家づくりをする相手を決める。
ここで言う仕事で一緒になるということはそういう相手になるということである。
本来ローコストをうたう私たちと、Z工務店ではそもそも土俵が違うのだろう。

そういった意味で男性からZ工務店の名前が挙がったのは意外であった。
きっと前回訪問してから、私たちのことを少しは調べただろう。
そして、堤君が、現在責任者が留守であることを伝え、次回一緒にリフォーム物件の現場確認を行う旨を伝えると、男性は今度は連絡先を残して帰って行った。

つづく

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