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田村和也雑想

2017年9月アーカイブ

2017/09/28

受け継がれる家 -1-

ある日、一台の軽トラックが事務所の前に停まった。

事務所は一方を駐車場、三方を道路に囲まれた中州のような場所に位置している。
三方の道路のうち、建物北西に直交する2つは、左程大きな道路ではないが、幹線走路への抜け道となっていて、比較的交通量が多い。
残りの北側に接する道路は、その向こうに建ち並ぶ4件の住宅のために作られた袋小路状の道路で、使うのはそこの住民か、僕たちに用のある気の知れた仕事仲間たちである。

歳にして50半ば過ぎくらいだろうか。
見たことのない一人の男性がその道路に停められた軽トラックから降りてきた様子が、打ち合わせをしていた僕の目に、窓ガラス越しに入ってきた。
男性はこちらに気づき、軽トラックの脇で、ちょいちょいと手招きをしている。

「ちょっと、すみません。」
クライントに一言かけ、
「お客さんが来てるよ」
と横にいたスタッフの関野さんに声をかけた。

関野さんは、ガラガラと無駄に大きく設計された引き戸を開け、庭を抜け、道路で待つ男性のところへかけて行った。
1,2分くらい話していただろうか、しばらくして男性は軽トラックに乗って帰っていった。

「誰だったの?」
打ち合わせを終えた僕は関野さんに話しかけた。
「よくわかりません。
何をしている会社か聞かれました。
設計と施工を行う工務店だと言ったら、何が得意か聞かれたので、手をかけて丁寧に設計した住宅をローコストで提供しています、と答えました。」
「で?」
「パンフレットないのかって言われたので、そういったものは作ってないので、ホームページを見てくださいって名刺を渡しました。」
「それで?」
「そんな対応じゃ、お客無くすよって、名前も名乗らず帰っていきました。」

なんのゆかりもない土地である町田に分室という形で事務所を構えて5年が過ぎた。
なぜ町田かとよく聞かれるが、それは埼玉県川口市にある本社からの距離と,都内へも多摩地域へも横浜方面にも行きやすいという立地を踏まえた実益を考えてのものだった。
設立当初は、平屋で外壁の半分がガラス張り、掘立小屋を作るような材料を組み合わせた変わった建物の物珍しさに、通りかかりの人に良く話かけられた。
中には仕事の相談をされることもあったが、通りがかりで頼むには住宅はあまりに高価な買い物だ。
今でも、そうした飛び込みで話しかけられることはぽつぽつあるが、敷地にも入らず、道路から「ちょいちょい」と手招きで呼ばれたことは初めてであった。
打ち合わせをしていたこちらに気を使ってのことかもしれないが、なんとなく良い気はしない。

恐らくそっけなく映った僕たちの対応に対して、きっと相手も同じことを思っただろう。

つづく

2017/09/22

東京都世田谷区桜丘で新築工事が進行中です。
この家の特徴はなんと言っても細長い。
建物の幅は4Mありません。長さは13Mほど。
4件住宅の立ち並ぶ通路の一番奥、細長い土地に目いっぱい計画しています。

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敷地の3方はみっちり住宅に囲まれていますが、東面は農園になっていて、大きく開けています。
現状は開放的な東面ですが、将来、建物の建つ可能性も考慮し、2階LDKには南東にバルコニー、中央の吹き抜けを利用して北面にハイサイドライトを設置しています。
建物形状と同じく、細長いLDKの奥に、北側の安定した採光を確保すると同時に、南からの風がハイサイドライトから抜けてゆく計画です。

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また、この家のもう一つの特徴は、「図書室」と呼ばれる部屋があることです。
本好きのご夫婦は、どこにいても本が手に取れるようにと、各所に本棚を設置していますが、玄関を入って右手側には長さにして6M、天井までいっぱいの間仕切り本棚を設置します。
玄関側からも使え、その向こうの細長い部屋からも使用できる、背板のない本棚です。
そしてこの細長い部屋が、「図書室」と呼ばれる部屋です。

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設計当初は普通に壁があり、細長い部屋は「子供室」という名前がついていました。
きっかけは、設計打ち合わせ中に奥さんの漏らした一言。

「子供には、いつまでも実家にいつくのではなく、時期が来たら早めに独立してほしい。
 快適な子供室なんていらないんじゃないか。
 図書室のような部屋を、必要に応じて子供に貸してあげる、そんなイメージがいいな。」

この言葉を聞いて、壁はオープンな本棚となり、室名は「図書室」となりました。

大きさも、形状も変わらない、ただの呼び方ひとつで、部屋の使い方のイメージは大きく膨らみ、
それと同時に、お施主さんの描いている生活を本当に形にできているのだろうか・・・
という、当時、私の持っていた漠然とした不安が一気に吹き飛んでいったような気がします。

住宅を設計していると、子供室に対する考え方は本当に人それぞれだといつも感じます。
4.5畳とか6畳くらいの収納付きの個室が必要といわれる方もいらっしゃれば、2~3畳くらいのスペースに寝台列車のようなベットと最低限の机、収納スペースがあれば良いという方まで。
それは、ご夫婦の子育てに関する考え方や、自分たちの実際に育った住宅や環境が大きく影響しているのだと思います。
もちろん、正解などありません。

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二歳になった、やんちゃ盛りで、いつもかわいい、まーちゃんとお施主さんご夫婦がこの部屋をどのように活用してゆくのか、今から楽しみです。

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