田村和也 雑想 blog

2024/01/10

新年あけましておめでとうございます。

お正月は家族と一緒に島根の実家に帰省し、久しぶりに出雲大社にもお参りをしてきました。

 

しばらく行かないうちに、出雲大社の参道にもオシャレなお土産物屋さんや飲食店が軒を連ねています。僕の子供の頃と随分このあたりの光景も変わったなと、しみじみしながら歩いていると、どこかで見覚えのあるものが目に入ってきます。それは、イチゴ飴とキュウリの一本漬けのようなものが串に刺さって売られている様子です。

あれっ?これどこかでも見たような・・・それは年末にいった、鎌倉の小町通りです。小町通りでも全く一緒なものが一緒な売られ方をしていました。そういえば、いちご飴は横浜中華街でもいたるところに売っていました。その時は、無知な僕は、いちご飴って中華街となにか関係があるのかな?もしかして発祥の地だったり??なんてことを勝手に想像していたのですが・・・

 

そして、驚いたことに島根からの帰りに寄った京都の清水寺の参道でも同じものが売られていました。いつぞや、タピオカがどこでも売られてブームになっていたように、最近ではイチゴ飴ブームなのかな?などと考えていると、鎌倉も出雲も清水寺の参道も多少売っているものは違えど、同じようなものに見えて来ます。

確かににぎやかな、参道の商店での買い物や食べ歩きは面白いかもしれませんが、どこへ行っても同じことをするんだったら、わざわざ、出雲や京都に行く必要性ってなんだろう?本当にその土地の風土や慣習を味わうってどういうことだろう?

 

出雲大社のお参り方法は、他の神社と少し違い、二拝四拍手一拝で参拝をします。出雲に帰って、そうだった、そうだったと思いながら参拝すると、ふとした瞬間に帰って来たんだなとありがたく感じる瞬間があります。実はこういうちょっとした習慣や作法の中にも帰省や遠出の味わいがあり、その土地を感じることに繋がって行くような気がします。それはきっと一時的なはやりを追うような、売上や儲けを第一に考えるようなものではなく。

そして家づくりも同じで、その場所場所にあった建ち方、振る舞い方をするようなものを一軒、一軒、丁寧に建てて行く必要があるんじゃないかとしみじみ考えさせられる年明けになりました。

 

大きな災害と予期せぬ事故などもあり、今なお、大変な思いをされている方が大勢いる中での新しい年のスタートとなりましたが、少しでも幸せな思いをする方が身の回りに増えるように、自分の身の周りからできることを頑張って行こうと思います。

 

 

ブログ

2023/11/06

またまた、ブログの更新が滞ってしまいました。

ブログは、日々考えていることを整理したり、ますいいでの活動をより多くの人に知っていただける良い機会だとは頭ではわかっているのですが、

日々の仕事に追われると、ついつい後回しにしてしまいます…

なかなかの意識の低さに自分でもあきれてしまいます。

 

少し前(と言っても、もう一年くらいになりますが)、一通のメールが届きました。

それは、オーナー住居+賃貸住宅を検討しているお施主さん候補からでした。

敷地はちょうど本社のある川口からも私のいる町田分室からも同じくらいの距離でした。

にもかかわらず・・・

町田分室あてにメールが届いています。

集合住宅となると私たちにとっては大きな仕事ですし、通常は本社で、となりそうなものなのに。

知り合いの紹介かな?などと考えても、場所柄やお名前に覚えがありません。

 

そして・・・

初めてお会いした際、少し緊張しながら

「どうして町田分室にメールを送ってくださったんですか?」

と尋ねると、

「田村さんの日記をずっと読んでいます。10年くらい」

と、本当にびっくりする答えが返ってきました。

「古くなった今住んでいる賃貸+住居を建て替えるときは、相談しようとずっと考えていました。」

 

こんないつ更新されるかわからない日記を、そんな長い間読んでもらっていたのも驚きですが、

少なからず、私の発信から、一緒に家づくりをしようと思っていただけたことがとてもうれしく思ったことを覚えています。

もうすぐ一年、まだまだ設計中ですが、お施主さんにとっても、賃貸で借りていただく方にとっても、街にとっても、価値のあるものになるように一緒に設計を進めています。

 

ブログも読んでいただける様々なひとに、まめな更新を誓って。

 

 

 

 

和紙選び

2023/01/26

モデルハウスもいよいよ大詰め。
茶室の襖に貼る和紙を選びに埼玉県の川島町にある和紙作家の岡崎さんの工房へ。

以前からお付き合いさせていただいている岡崎さんは草木や金属を顔料として手漉き和紙を制作する作家さんです。
以前建てさせていただいた住宅では、お施主さんも自ら和紙漉きをさせていただき、リビングのメインの壁に貼りました。

モデルハウスでは、日本でも指折りの左官職人さんにお願いした土壁とサンプルで合わせ、二種類の和紙を選ばさせていただきました。
ひとつはすでに出来上がっていたものですが、もうひとつは顔料を選ばせてもらい、新たに漉いていただくことにしました。

茶室だけでなく、すべての部屋が木や漆喰、石などの自然素材に囲まれたモデルハウス。
どんな場所になるか楽しみです。
3月のオープンに向け、もうひと頑張り。

 

長竹のカフェ兼住宅

2023/01/13

神奈川県相模原市緑区長竹でカフェ兼住宅の地鎮祭を行いました。

クライアントは早期リタイアをされたご夫婦で、自然豊かなこの地でカフェと週末ゲストハウスを営む新しい生活をスタートさせます。

建物が建つ前に、川向こうの古い空き家を借り一足先にこの地の住人になったお二人のまわりには既にたくさんのご近所さん、まるでずっと前から住んでいたように多くの人たちに囲まれて生活をされている様子が印象的です。

普段は私たちの用意した、作り物の竹を建てて行う地鎮祭も、当日は神主さんが大きな本物の竹を用意して持って来てくださり、立派な祭壇をたててみんなで工事の安全と良い建物となることを祈りました。

建物は三角の切妻屋根が扇形に並ぶ平屋建て。
地域のシンボルになるような、それでいてこの地の山や自然になじむような建物になればいいなと思います。

 

 

 

 

資料館めぐり

2023/01/04

年明け早々、久しぶりに島根の実家に帰ってきました。

島根県の冬は寒く、曇りの日も多くなかなか外で何かする気になれません。山陰と言われる所以でしょうか。帰っても意外と暇を持て余します。

そこで、実家から車で一時間、島根と鳥取の県境にある和鋼博物館に行ってきました。和鋼博物館は出雲の奥から安来市あたりにかけての伝統産業である「たたら製鉄」の資料館です。「たたら製鉄」と聞いてもなかなかなじみがないかもしれませんが、もののけ姫で描かれていた「たたら場」がまさにそれです。

図書館と一体となったミュージアムはとても地味で、当日も私たち以外誰もいませんでしたが、たたら製鉄の製造工程やその地域の風習、地勢から生まれた伝統産業がいかに今のモノづくりにつながっているか等、丁寧な展示がされていました。

私たちも今、縁があり、川口市の産業資料館の設計に携わらせていただいていることもあり、最近はいろいろなミュージアムめぐっています。

 

研ぎ出しの土間

2022/12/04

目黒区でリフォームさせていただいている住宅のアプローチ土間を研ぎ出しで仕上げました。
研ぎ出しってどんな仕上げと聞かれると、昔の小学校の水飲み場のような仕上げと答えます。
コンクリートを打って乾いたのちに表面を削って中の砂利や石のテクスチャーを出していくような仕上げです。
効率化が優先される現在ではなかなか見ることのできない工法です。

今回はお施主さんが選んだ何種類かの石を使い研ぎ出しを施工します。
とは言え、私も初めてやる工法。
職人さんに事前にいくつもサンプルを作ってもらい、仕上げ感を皆で共有し、いざスタートです。

少しづつ打ったコンクリートにあらかじめ決めておいた配分で石を並べていきます。

はじめは見ていたお施主さんも途中から一緒に石を並べていきます。
自然と体が動きます。


次の日に乾いたら、コンクリートの表面を機械で削ると、少し埋まった石が顔お出し表情のある土間に仕上がっていきます。

手間と時間と、そして費用もかかりますが、ここにしかない、そしてどこか懐かしいアプローチの床が出来上がりました。

町田の住宅上棟

2022/04/29

東京都町田市の住宅が上棟しました。

設計・現場担当はいつの間にか入社6年目になった水原。

一階玄関と二階のリビングとは薪ストーブの置かれる大きな吹き抜けを介して緩やかにつながります。

上って来る階段の途中には、中二階の書斎を設け、空間にアクセントをもたせ、

リビングに上がると大きなウッドデッキ越しに、遠く公園の緑が望む、とてもうらやましい環境が広がります。

都心から少し距離を置き、新しい生活のばとして心地良い場所を目指し、ひとつひとつ丁寧に作っていきたいと思います。

 

ベンチのような小屋のような

2022/03/14

世田谷区砧の住宅のお庭に小さな小さな建築を設計しています。

お声がけいただいた当初は、用途も何も決まっていなく、

広さはそこそこあるのだけど、庭をどう使ってよいかわからず・・・

何か楽しいことをしたいんですが・・・

提案してもらえませんか??

こんな感じのご相談。

私たちも、何ができるかよくわからないまま、

模型を作り、提案を何度か重ね、

ようやく方向性が見えてきました。

担当は町田分室の和順君。

小屋のような提案から、打ち合わせを重ねるごとにどんどんサイズは小さくなり、最終的にはお施主さんの趣味である植物を育て、飾ることのできる温室のようなベンチのような不思議な建物になりました。

配置も建物側に寄せてみたり、離してみたり・・・

こちらは最後には、建物の真反対、塀の角にちょこんと置かれることになりました。

リビングの掃き出し窓の前に設けたデッキと対面した位置に置かれ、

玄関アプローチからお庭へ人をお迎えするような場所。

小さな小さな建築ですが、お庭に奥行きが生まれ、楽しそうなイメージが膨らみます。

完成が楽しみです。

 

 

吉野の山の話

2022/03/02

少し前の話。

昨年末、奈良県の吉野のお付き合いをはじめさせてもらった山に見学に行きました。

吉野と言えば杉が有名で、吉野杉という言葉を耳にしたことのある方も多いと思います。

ますいいリビングカンパニーは、構造材含め国産材料にこだわった家づくりをしていて、

従来、八溝と呼ばれる栃木県産、関東の木材を主に使っていました。

しかし、昨今のウッドショックの影響もあり、そこだけでは供給が追い付かず、

吉野産の木材を直接仕入れ構造材に使わせていただいています。

そして、お付き合いをはじめるにあたって、一度、現地を見させていただこうと奈良県まで行ってきました。

吉野の杉ってきっといいんだろうな、という漠然としたイメージで現地に向かいましたが、

やはりイメージと実際に見ることは大違い。

製材所や山で働いている人、木こりさん、いろいろな人の話を聞き、山に登って伐採に立ち会わせえてもらい・・・

そして、伐採した木の倒れる瞬間などはまさに圧巻です。

「吉野の木は悪いものから切っていくんですよ。

いい木ばかり切っているとこれからの人たちに何も残りません。

先祖から受け継ぎ、未来につなげていく。

だから吉野の山には100年、200年を超える木がたくさんあるんです。」

「今日切った木はだれが植えたのかな?

ひいおじいさんか、ひいひいおじいさんか笑」

まさに祖先から受け継いだものを未来に手渡していく。

普段、私たちの考えている時間の感覚、スケールと全く違います。

 

 

木は切ると、その断面から水があふれてきます。

それを見るとまさにさっきまで生きていたんだなと感慨深い気持ちになります。

100年、200年と生きた木、そんな大切な命を使わせていただいている。

もっともっと、ずっと大切にしてもらえる、世代を超えても使い続けてもらえるような

そんな建築を作らなきゃいけないと深く考えさせられる旅になりました。

 

 

 

 

4月に完成した南生田の家の撮影を行いました

2021/11/24

4月に完成した南生田の家の撮影を行いました。

 

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撮影と言ってもいつもの写真とは違い、今回は動画です。

ホームページでもご紹介させていただいていますが、当日の座談会と一緒に動画を編集したものを流す
オンラインでのオープンハウスを企画しています。

企画していると言っても皆初めての試み。
カメラはどうする?音声はうまく拾えるかな・・・
試行錯誤の連続です。

まあ、建築でもこうしたイベントでもそうですが、初めてのことをやるときはなんでも大変です。
当然ですが、いろいろと考え、事前に準備をし、それでもうまくいかない部分もあったりと。

それでもいつもと同じことをやっていても進歩がありません。
ということで、心配な面はありますが、皆さん暖かく見守ってください。

そして多くの人のご参加をお待ちしています。

 

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高崎分室も参加している、中之条ビエンナーレ2021に行ってきました

2021/11/15

高崎分室も参加している、中之条ビエンナーレ2021に行ってきました。

 

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かたや裏の小屋 ますいいリビングカンパニー高崎分室

ビエンナーレは、アートと町おこしが一緒になったようなイベントで、
最近はいろいろなところで行われていますが、私は初めて見に行きました。

車で移動しなければとても見れないようなかなりの広い場所、町全体が会場ですが
空き地や空家、神社などをサイトとして、町の中にまさにアートが散りばめられています。

 

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マップを持って歩いていると、地域の人たちにもよく声をかけられ、
町全体に受け入れられている感じがとても心地よく、率直に良いイベントだなと思います。

 

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すれ違った学生風のグループの一人から
「なんだか町のすべてがアートに見えてきた」
という声が耳に入ってきました。

そうなんです。
町を歩いていると、なんだか何気ない風景まで
「これも展示??」
というような気分になってきます。

町の風景をアートに見立てて収集している芸術家グループもいましたが、
そんなところを紐解くまでもなく、
風景はいろいろなものの重なり合いでできていて、もちろん時間的なものも含めて、
僕らの視点、モノの焦点を少しずらすだけで、きっともっと豊かで、奥行きのある生活がおくれるんじゃないか。

そんな気分にさせてもらいました。