茶室について

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茶室について

茶室についてのコメント

住宅というのもは個人の持ち物である。これだけ多くの住宅ストックがあって、しかもそれを使いきれなくて空き家問題が取り上げられているような時代にさらに家を作るということは、この個人の持ち物であるということによることが唯一の理由であるように思う。個人の持ち物であって、個人のためのものであるならば、クライアントが想像する理想の生活を作り上げるための拠点としての姿を、徹底して追い求める姿勢がとても大切であるように思うのである。

でも家づくりの中で、普通の契約体制の中で、こだわりを徹底して追い求めることにはとてもお金がかかる。これはどうしようもない事実だ。材料を材料屋さんから購入して、それを作る作業をすべて職人さんに頼んでいたのでは、とんでもない人件費がかかってしまう。今は江戸時代とは違うのだ。一部の特権階級だけが豊かな生活をして、それ以外の人は生きていければよい、なんていう時代ではない。職人さんだって豊かな生活をするし、そのためにはある時間の労働に対して、それ相応の対価が支払われる必要があるのであり、特殊な作業になればなるほどに人件費というコストがかかってしまうことは避けられないのである。

では人件費を落とすために何ができるか、この答えの一つが セルフビルド だ。

先日、僕たちは茶室を作った。この茶室はスタジオジブリの作品の中に出てくる建築群とも深い関係を持っている、建築家の藤森照信先生に頂いたスケッチに基づくもので、茶室とはいっても伝統に基づく類のものではない。狭い空間であるということ、入り口が小さいこと、茶室として認められる言語を持つとしたら、この2点である。

 

構造は6㎜の鉄筋を使っている。床はべニヤの構造に麻の布を張り付けたものだ。まゆのような白い幕は毛糸をその鉄筋に巻きつけたものだ。作業はすべてセルフビルドで行った。僕が参加したのは2時間程度、あとは写真のごとくますいいのスタッフが協力して作り上げたのだけれど、もしもこれを職人さんに頼んだとしたらいったいくらかかるのであろうか。

 

・ベニヤの床工事は大工さんの仕事である。・・・1人工=25000円
・麻の床工事はカーペット屋さんに依頼する。・・・材工で100000円
・毛糸の工事は・・・だれがやってくれるだろうか?たとえば多能工の派遣会社に依頼したとして・・・3人工=60000円
・鉄筋工事は大工さんについでにやってもらう。・・・無料
・鉄筋の色塗りは塗装屋さんの仕事だから・・・1人工20000円
・カーペット以外の材料費・・・概算で100000円(これは実際にかかったお金である。カーペットは簡易的な麻布で代用したので実際はこの金額にすべての材料費がおさまっている。)
上記が簡単に予想した職人さんの人件費と材料費である。もしも正式に職人さんに依頼したら、今回僕が実際に使ったお金よりも、205000円も多く費用がかかることになるのである。この差は、自分が造りたいものを手に入れるために、その工事を実際にやるかやらないかを判断するくらいに、とても大きい数字である。もちろんお金をいくらでもかけられる人はプロの職人さんに作ってもらえばよい。でそうではない場合、少しでもコストを抑えて、かつやりたいことをやるというのがとても大切なことである。そんなとき、自らが多能工になってしまうことがどれだけ有効かということが、上記の比較からもよくわかるのである。

セルフビルドには無限の可能性がある。だって自分のものを自分で作るのだ。クレームなんて気にしないし、気に入らなければやり直せばよい。

増井真也

増井真也