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ますいいリビングカンパニーは埼玉県川口市にある注文住宅を作るデザイン設計事務所です。
ローコスト・セルフビルドでよい素材を上手に使い家族が幸せになる、そんな建築を目指しています。

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現場進行中

ローコスト住宅建築記 埼玉県川島町のカフェ兼住宅

「川島町の家」はこれまで企業でお勤めをしていたミドルエイジのご主人が、退職し、スローライフカフェを楽しみながら生活の拠点となるような建築を造りたいという思いからスタートした。敷地は160坪ほどあり、南北に細長い形状をしている。カフェを営む傍らでハーブなどを育てる簡単なガーデニングを楽しみ、来てくれたお客さんと一緒に過ごすことのできる庭が欲しい。家は2階に最低限のスペースがあれば良く、豪華な設備などは不要だ。建築はなるべくローコストでお願いしたい。できることは自分でやる。前の家に合った古い建具など利用できるものはなるべく利用したい。これがクライアントのHさんから聞いた言葉である。

この依頼を受けて、私はこの建築を長野県の入笠山にある大好きな建築「入笠小屋」をイメージして作り始めた。この小屋は詩人の尾崎喜八さんが戦火を逃れるために疎開したときに作ったとのことだが、今では小間井さんという初老の主が宿泊客を迎えてくれる。

入笠小屋 外観md-20090503.jpg

内観md-20090503-3.jpg

写真のガラス張りのリビングは小間井さんの手によるセルフビルドだ。聞くところによると毎日、毎日セルフビルドでどこかしらを手直しし続けているということ。。周りを見回してみると、例えば杉の貫板という雑材料で窓枠を作っているところもあれば、本当にこれでよいの?と疑ってしまうような暖炉、連続してガラスがはめ込まれている普通に作れば多くのコストがかかりそうな羽目殺し窓が90角くらいの雑材でいとも簡単に作られている様子、どうやって防水しているのかまったくわからないような3階に作られた露天風呂、そしてそこに上っていくためのくねくねとした長い長い渡り廊下、ここには一般常識では考えられないような自由な建築があるのだ。

日本の建築は高すぎる、これは歴然とした事実だ。この建築は小間井さんの手によって、法律も一般的な収まりもすべて無視した自由な作品である。そして、ものすごく安く作られている。虫が入ってきたり、隙間風が吹いたりの苦労は当然ある。しかし、肌寒い季節に暖炉に火を入れてゆったりとくつろいでいるとき、そんなことすら愛おしく思えてくるのだ。

このページでは、川島町の家が出来るまでの様子、そしてお店のオープンまでの様子を追いかけてみたいと思う。この物語が皆様の家造りの参考になれば幸いと考えている。

増井 真也

迎え入れる建築

「川島町の家」は埼玉県川島町に建てられた、木造2階建ての住居兼カフェです。
床面積は22坪。1階を店舗、2階を住居にしています。

 外観g-hirayama2-1.jpg

1階店舗・2階リビングダイニング
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敷地

敷地は埼玉県の中心部から北西へ、荒川が入間川に分岐し、広大に群を描いて重なり合う円環状の集落の中にあります。
ここは旧川越藩の米どころであり、本当にのどかな田園地帯が延々と広がっています。

土塁状の古墳、地蔵、道祖神、鳥居、環濠水路、自生のコスモス、田の神…などが所々に散在し、古代の匂いがどこからか感じられます。
生き物、虫や鳥や樹木が野生的で、2m/s程度の微風が常時吹いている、風が印象的な場所でもあります。

 

田園風景・敷地
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コンセプト
クライアント夫妻のご予算が1300万円弱と破格な為、今までとはまったく異なるスタディを積み上げました。
設計上の部分と全体とをいったりきたりするスタディに加え、常にコスト意識がつきまといました。
ローコストによる安価で低廉な品質ではなく、必要・不必要を徹底的に選別することで、本当に必要なものの中に、豊かさがにじみ出てくるような建築を目指しました。

例えば、室内の仕上げの壁は本当に必要だろうか?天井は張らなければならないのか?店舗なのだから床は貼らないで、土間コンクリートのままで良いのでは?窓枠は必要か?必要以上に部屋を仕切る間仕切り壁、建具はいらないのでは?そもそも仕切る必要がないのでは?カメラ付インターフォン、ウォシュレット、人感センサー付照明など過剰な設備器機は必要だろうか?

その代わり、この恵まれた敷地における眺望は大切にしよう。広く南北方向に奥に長い敷地の特性を生かして、建物を介した前面と背面の繋がり、視線の抜け、透ける空間を意識しよう。構造材としての木(米松や杉)の梁や柱が持つ、モノとしての素材感、力強さを大切にしよう。クライアント持参の照明、木製建具、ステンドガラスなどを再利用し、身近な生活の記憶を繋いでいこう。

これらがコスト意識と並列して、初期段階において、漠然とながら大きな方向性として確定されていました。

施主支給照明
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施主支給引き戸・施主支給ステンドガラス
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概算見積
設計に先立ち、工事原価の予想として、全体の予算表を作成しました。建築は小さな部位の集合体からできています。柱、梁、壁、屋根、床、窓、設備機器…。
通常は、設計が終わった段階で「さぁ見積りだ!」となるわけです。しかし本プロジェクトではそんな悠長な逃げは効かないと分かっていたので、最初の段階で金額の大枠を掴みたかったのです。

過去の同規模、同仕様の物件を参考に、ザックリとA4用紙1枚にリストアップしてみました。基礎は立ち上り無しのコンクリート打設1回で90万円、木造躯体プレカットはシンプルな形態を念頭に100万円、屋根板金は素直な片流れと最小面積で30万円、サッシは既製品が主体で30万円、設備は敷地が広いから給排水管が長くなって60万円、仮設はかかって80万円…。後日、本見積りをまとめ、契約時に振り返ってみると、ほとんど概算見積りの金額近辺に収まっていました。

思えば手順として、この初期段階での第一歩を踏み外さなかったことが、後々もブレることなく竣工まで漕ぎ着けることができた、最大の要因だと思います。

基礎
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木軸組
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 サッシ廻り
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試行錯誤とコストカット
当初、ローコストやセルフビルド設計のとっかかりとして、建築家による様々な実験住宅の事例を読み漁りました。ジャン・プルーべのユニット化した住宅設計の手法。フランク・ロイド・ライトのタリアセン・ウエストにおける、弟子達との共同作業を通じたセルフビルド。石山修武の自邸・世田谷村におけるセルフビルドの試み、等々です。

これらの事例を一度自分の頭の中に通すことで、様々なキーワードがおぼろげながら浮かんできました。
自分でつくれるものはつくる。今使っているものを再利用する。既製品を上手く転用する。材料は貰ってくる、拾ってくる
。金物屋やホームセンターで安く買ってくる。インターネットで安く取り寄せる。リサイクルショップで味のある品を探してくる。

とにかく沢山のアイデアを練り、ブレインストーミングしました。例えば実現には至らなかった提案を挙げてみると、以下のようなものがあります。
アルミ缶を拾ってきて、切り張りして外壁の仕上げ材にする。ペットボトルを拾ってきて、組み合わせて壁の中に入れて空気層をつくることで断熱材とする。JRの忘れ物傘を安く引き取って、開口部の一部とする。全ての壁仕上げをパネルモデュール化し、セルフビルドにより取り付ける・・・等々。
現実的では無いものを含めて、一度、家づくりの既成概念から離れたかったのです。

またコストカットについても考えました。業種を省いたり、兼ねたりすることで建設費を安く抑えられないか?例えば、今回のプロジェクトでは左官工事、塗装工事、家具工事はありません。左官や塗装はセルフビルド、家具は大工さんに造ってもらいました。土間の仕上げも基礎コンクリートを打った時に、コテ押さえで終了です。

これらの思考の断片が、基本・実施設計の土台となっていきました。

基本・実施設計
建物の形はシンプルな四角形とし、間仕切りを最小限に減らしたコンパクトな間取りとしています。 プランニングは、1階をカフェと納戸。2階をクライアントの居住空間に割り当てました。
平面は、基礎コンクリート面積、屋根板金面積が最小限で済むよう、総2階建ての面積計画としています。基本的に各階居室はワンルームで間仕切りは最小限としています。トイレや洗面脱衣室などプライバシーが必要とされる部屋に必要な枚数の戸を設けました。
また、仕上げ材についても、室内は内側の壁、天井は張らず、柱や筋交いや梁などの構造材を露出させて最終仕上げとしています。

南側外観模型 S:1/30
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1階内観模型 S:1/30
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2階内観模型 S:1/30
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1階店舗・1階店舗(北側庭を臨む)
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2階リビングダイニング・階段室
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クライアント
このクライアントにしてこの建築なんだなぁとつくづく感じ入ってしまします。初めて事務所に来て頂いた時には、コンセプトを書面に作成していました。そこには今後自分達がやりたいことが、簡潔にそして具体的に書かれていました。

造り過ぎないナチュラルな雰囲気、どの季節も楽しめるよう花木を中心した店づくり。耳障りにならないBGM。味のある椅子やカップの選定。地産地消を心がけたメニュー構成。自家焙煎した豆によるコーヒー、川島産の米、自家製の手づくりパン、無機農薬野菜や豆を中心としたパスタやカレー、スイーツ。庭のハーブを使ったハーブティ。日曜日の午後・夕はプライベート開放…。
我々に伝わってくるメッセージが、分かりやすく箇条書きにされていました。本当にそんな素敵な場所が出来たらいいなぁと、思ったことを覚えています。

設計や現場を通じてもコミニケーションがとてもとりやすかったです。几帳面な方々で、メール、ファックスの返信、資料の郵送は、約束や期限を守る。率先して作業を進めてくれ、職人さん達にも丁寧に挨拶する。基本的なことですが、大切なことを確実にされていて、とてもやりやすかった実感があります。

そして何よりも様々な遅疑逡巡を経て決まった設計方針を、全面的に信頼してくれました。これが全過程を通して、頑張らねばと勇気づけられ、プロジェクトを前進させる原動力になったと思います。

2階リビングダイニング・階段室
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クライアント持参椅子+テーブル
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隠れ家カフェ
クライアントからは隠れ家カフェの希望を聞かされていました。色々な事例の載った本もお借りしましたが、正直あまり読み込みませんでした。イメージが既成のものに引っ張られるのには警戒感がありました。私が思ったことは、こんな気持ちの良い敷地まで来て、外部に閉じた閉鎖的なカフェだけは厭だなということでした。これは終始一貫して感じていました。

そしてある時点から、このプロジェクトは場所づくりだと思うようになりました。この敷地、この時間、この条件下で居心地よい場所を確保しよう。そして、今後時間が経ていくうちに、クライアント自身で着心地の良い衣服のような建物にカスタマイズしてくれれば良いのではないか、と思うようになりました。

素材について
内装材は比較的理詰めですんなりと決まりましたが、外装材については最終段階まで悩みました。

初期段階から、クライアントから自然素材の木を外壁面に張りたいと要望がありました。ただ、コストとメンテナンスを考えると、2階建の全て外壁に木を使用することは難しいと思われました。
そこで、低コストで自然の風味を残す素材を、構法の面からも模索することになります。

2階の外壁にはフレキシブルボード(以下フレキ板)を使用しました。
これは、セメントを圧縮成型した薄い板です。本来は外装の下地などの部位に使われることが多い素材です。しかし、比較的強度も良く、サイズや厚さも様々あり、何より荒削りで程よくセメントの風合いを残した表情がいいのです。 ますいいの事務所の外壁にも使用されています。
たまたま、事務所の外壁をボンヤリと眺めていて、パリッとしてなかなか格好いい仕上げだなぁと呑気に思っていた時に気づきました。早速単価をチェックし、サンプルを取り寄せて強度もクリア出来ることを確かめました。
これに塗装はクライアント、実際に張るのは大工さんというストーリーを組み立てました。大工さんには、部屋内の仕上げ壁(石膏ボード)は張らなくていいから、代わりに外壁の仕上げを同じ手間代としてみて下さいと説明しました。

1階の外壁にはポリカーボネイドの波板を使用しました。
自然素材である杉板やフレキ板、ガラス(ガラスも素成分としては水)との対比に合う、最後の素材がなかなか決まりませんでした。
外壁の仕様に煮詰まったある休日、気分転換も兼ねて外出しました。私の事務所のある川口は、昔から鋳物の街として有名だったせいか、いまだに工場や作業場が多い地域です。街を歩いていると、波板スレートを張った古い工場がなんとなく目に入って来ました。そういえばこんな武骨な表情の素材、好きだったよなぁと思いあたりました。 カフェということもあり、もう少し軽く柔らかい表情にしたかったので、最終的には半透明で32波のポリカーボネイド板に決めました。
半透明の為、夜間になると階段室は照明でボンヤリと浮かび上がってきます。

クライアント持参椅子+テーブル
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東立面(1階:ポリカ+2階:フレキ)・北立面(1階:杉板+2階:フレキ)
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セルフビルド
今回のプロジェクトでは大胆なローコスト住宅を実現する為、従来型の家つくりから離れた仕様や構法を採用し、セルフビルドをふんだんに取り入れています。

外壁には、フレキ板と波板と杉板を張っています。クライアントが自らメンテナンス出来る高さには自然素材の杉板を配しました。フレキ板と杉板は、クライアント自らが塗装し、他にも防蟻処理、土間コンクリートのAU塗装、フローリングの塗装、内部木軸の仕上げ塗装、壁のタナクリーム仕上げ、デッキの塗装など塗装工事を徹底的なセルフビルドとしました。

クライアント自身、手先が器用であるとか、過去に物づくりに従事していたというようなことは、特にありません。私達が組み立てた工程と作業に対して、ひたすら黙々と手を動かしていました。セルフビルドを通して自らの家づくりに向き会うその姿は、常に真剣なものでした。

 


 防蟻塗装・外壁杉板塗装
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セルフ左官        材木加工
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フレキシブルボード塗装
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パテ下地処理
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フローリング塗装
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分離発注
ローコストの実現には、施工業種を兼ねたり、部位を一度分解し、分離発注して組み立て直すことを心がけました。その為、考えつく限りの手法を実行しています。

例えば1階店舗のガラスは、枠を汎用品であるアルミハット型鋼とし、大工さんにより取り付けてもらい、ガラスはガラス屋さんに別途取り付けてもらいました。メーカーの既成のアルミサッシで同規模のものを使用すれば、金額は倍以上かかるでしょう。

また、2階のキッチンカウンターは、下地は大工さんよって木で組み立ててもらい、ウレタン防水塗装はクライアントにお願いし、ワークトップのステンレス板は金物屋に製作してもらい、搬入は私が現場監理のついでに軽トラで運び、組み立てはシンクなどの機器取り付けと同時に設備屋さんにお願いしました。

工程の理解と業種間のチームワークがあって、初めて成り立つ方法です。

 

アルミハット鋼取り付け(大工工事):ガラス取り付け(ガラス工事) 
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アルミハット型鋼
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ガラス取り付け 
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完成ファサード
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現場
のどかな川島町の集落に新規の住宅が建つということもあって、隣近所の方々も興味深々でした。私も何回も現場に通い、挨拶を重ねていくうちに、自然とお話をする機会が増えていきました。クライアントのセルフビルドを見かねて、デッキ製作の為の工具を貸してくれたこともありました。畑で採れた野菜、春菊や生姜など、お土産に頂いたこともあります。日本で失われつつある、地域コミュニティの結束が残っているだなぁと実感しました。

足場が外れて建物の全体が明らかになった時、いつもの通学途中の小学生達が、ニコニコしながらぼんやりとこの建物を眺めていました。あの時は、何か理屈ではなく、嬉しかったことを覚えています。小学生達には、何の建物に見えたのだろう。

現場は夢の様な現場でした。特に、お昼ご飯を食べた後、横になって昼寝した際に吹く風は、本当に心地良く感じられました。

工程管理
職人さんのスケジュール調整には腐心しました。事務所から車で1時間半かかる現場に、いつも仕事をしている気心の知れた職人さん達を引き連れていくことになります。何回も現場に足を運ぶことにならないように、コミニケーションと段取り力を意識しました。

現場管理はとても想像力がいる仕事だと思います。適正なタイミングで材料を発注したり、人をとりまとめていかなければなりません。しかも今回は各工程にクライアントによるセルフビルドも挟み込まれます。職人さん達に気持ち良く仕事をしてもらう環境づくり、それさえ出来れば、後は具体的な作業の積み重ねです。

職人気質
建築は最後は職人の手によって造られます。厳しい物件であればあるほど、職人の腕がダイレクトに反映されます。今回は、本当にそのことを実感しました。

本プロジェクトでは、標準仕様を外れたイレギュラーな納まりを多く取り入れています。普通ならまともに聞いてももらえません。今回も、最初は皆、半信半疑で聞いていました。しかし、粘り強くコミニュニケーションを図っていくうちに、少しずつ耳を貸してくれ、アイディアを出してくれるようになりました。そして各工程の最後には、このプロジェクトのコンセプトや意義、大切なことを理解してくれていました。それぞれが楽しんで、最大限の腕を奮ってプロフェッショナルの仕事をしてくれたと思っています。

例えば、大工さんの床貼り。
今回、内側の壁仕上げの石膏ボードを貼らない仕様としています。そのため2階の床を貼る際に、柱と間柱の間をいちいちフローリング材で埋めていかなければなりません。また普通なら壁に隠れますが、そのまま仕上げとなる為逃げが効かず、高い施工精度が求められます。この手間のかかる作業を、丁寧に細心の心がけでやってくれました。

例えば、電気屋さんの配線。
天井を貼らない仕様の為、通常なら隠れる電気の配線が全て露出してしまいます。この為、2階の床フローリングの下に9㎜のベニヤ板を1層分捨て貼りして、1階と2階の配線の取り回しを、全てこの9㎜分のスペースで行いました。非常に大変な作業だったと思います。正直、この配線計画は全然理解できず、最後まで電気屋さんの頭の中に配線図がありました。

例えば、設備屋さんの配管。
電気配線同様、ニッチな配管スペースを見つけてよく配管してくれました。たとえ隠れてしまっても、美しい配管というものを初めて見ました。

その他、板金屋さん、基礎屋さん、サッシ屋さん、金物屋さん、材木屋さん、プレカット屋さん…など上げればきりがありません。この場を借りて建築に携わった職人さん達に謝意をあらわします。

完成ファサード
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2階フローリング下電気配線・厨房廻り給水給湯配管
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風景
建物の南側ファサードには、訪れる人々を広く大きく迎え入れるよう、1.25m張り出しの庇空間を設けました。庇の下には、セルフビルドによる唐松足場板のデッキスペースが広がっています。住宅の北側には洋々と広がる田んぼの中に、クライアントの手造りによるガーデン、ハーブ園が進行中です。

田園風景、夕日に染まった秩父連山、遠くは富士山を眺められるよう、上下階共に幅5mの開口部を設けました。この建物はそれだけで十分であると思います。
風が印象的なこの風景の中に、時間をかけて自然と溶け込んでいける場所になれば良いと思います。

 

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佐野 記士

DATA
敷地面積 490.20㎡
1階床面積 36.81㎡
2階床面積 36.81㎡
屋根 ガルバリウム鋼板
外壁 フレキ板、杉羽目板、ポリカ波板
構造材 杉、米松、ホワイトウッド
内装 漆喰仕上げ、杉羽目板、合板アラワシ
総工費 1270万円

 

 

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