ますいいの運営するノンプロフィットレンタルアートギャラリーとギャラリー。各アート作品の展示・販売をするショップとなっております。

公式サイト>

ますいいでは、古くなった物件を壊すことなく次の世代に引き継ぐお手伝いをしております。

詳細情報>

ますいいリビングカンパニーは埼玉県川口市にある注文住宅を作るデザイン設計事務所です。
ローコスト・セルフビルドでよい素材を上手に使い家族が幸せになる、そんな建築を目指しています。

ますいいリビングカンパニー|埼玉県川口市

ますいいについて/about us
作品集/gallery会社概要/corporate現場進行中/project仕事の進め方/workflow
増井真也日記
田村和也雑想設計室雑感
お問い合わせ/contact

top > 増井真也日記 > 増井真也日記top

増井真也日記

< 1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11

2018/04/05

8時ごろ、スタッフの土田君と一緒に川口市坂下町にて進行中のHさんの家のリフォームの現場確認へ出かけた。Hさんの家は水道工事業を営んでおり、倉庫や資材置き場、そしてとても大きな住宅が一つの敷地に混在している。お父様の高齢化に伴い少しずつ整理をしつつ、倉庫の一角にお嬢様のための書斎スペースを作ろうという計画である。この書斎スペースでは、高校教師のお嬢様の専門である卓球関係の事務作業などを行う予定だ。自宅の趣味と仕事のための場所ということで、檜の床や壁材を使用した心地の良い空間となるように計画している。現在は母屋のメンテナンスのための外壁足場を組む工事と、長い間に蓄積された不要なものたちを撤去するための解体工事を行っている。最近は解体屋さんもとても忙しいようで、今日も3人だけでの作業であるがようやく書斎スペースを作る予定の場所があらわになってきた。これまではモノが多すぎて足を踏み入れることも出来なかったので、これで本格的な計画を進められるであろう。

続いて川口市南鳩ヶ谷にて進行中のYさんの家のリフォームの現場確認。今日は外壁の煉瓦を貼るために職人さんが来ている。職人さんといっても今日来てくれている金澤さんはものつくり大学出身の女性職人で、左官の分野で技能オリンピックなどの参加経験もあるいわゆる「ものつくり人」である。若い頃にやんちゃして、まじめに働くようになったら職人になるという昔ながらの職人イメージではなく、物を作ることが好きでそのための学校に行き、技を磨いて物を作っている人=ものつくり人の職人さんなのだ。普通の職人さんとはちょっと違うので、来ている助っ人もさらに若い女性たちである。しばしにぎやかな現場となったのである。

最近はこういうものつくり人が増えているように思う。そもそもますいいにいるスタッフも同じようなタイプの人間だ。家づくりが好きで、デザインをして材料を購入し職人さんと打ち合わせをしながら家を作るという作業をしている僕たちと、ものつくりが好きで大工や左官職人をやっていいる人たちとの間には少しも差はないように思える。こういう仕事をする人というのは虚像ではなく実態に接していたい、そして生身の人間と直接にやり取りをして、直接に喜ぶ顔を見たいというそんな欲求を持つタイプなのであろう。こんな素敵な仲間たちとものつくりができる状況、そんな状況こそが何よりも素晴らしいと思うのである。

20180405.jpg

10時、東京都小金井市にて設計中のOさんの家の打ち合わせ。

19時、新人スタッフをを交えて食事会。2時間ほどの会食を経て帰宅。

2018/04/04

朝10時、東京都豊島区にて計画中のお寺の屋根の葺き替え工事打ち合わせ。築90年ほどの古い瓦屋根を下ろして耐震の補強工事を行い再び瓦を葺く工事についての打ち合わせなのだけれど、お寺となると工期も長く様々な行事との時期的な調整なども必要なため、何かと打ち合わせが必要となる。瓦の種類もお寺用の専用瓦のごときものが必要で、予想通りお値段は高くつく。耐震補強工事もどこならば壁を作ってよいのかのジャッジなどなどなかなか難しい。本堂の中央付近に壁の新設を提案しても、そんなところに壁を作るくらいなら計画自体がだめになるといわれてしまえばまた考え直すしかないわけで、住宅のように自由がないというのが実情であるのだ。かれこれ2時間ほどのお話の後終了。引き続き計画を進めていかなければならない。

夕方、大工さんの面接。来週から来てもらう予定で話を進める。

池田さんと話をしていたらAIによる設計を研究しているグループがあるという。諸条件を入力していくとプランが立ち上がる、そんなシステムはすでに確立しているような気もするけれど、人工知能によって学習していくシステムが実現すれば、出来上がる建築のモデルが建築家が考えるそれと同等に多様化して行く時代が来るのかもしれないなあという気もする。一方で建築家の職能というのはプランを考えるだけではないんだよの自負もある。様々な感情を整理して、そこにあるべき建築とはを考える過程は、単純な入力作業ではない感覚的な部分である。デザインは最終的な建築の顔ではあるけれど、形にはならない建築が実現する過程のデザインというもののほうが実は重要な部分であるような気もする。

伊豆の長八美術館という建築がある。ますいいリビングカンパニーの生みの親でもある石山修武先生の作品であるが、この美術館の建築では全国の左官屋さんが鏝仕上げの仕事をするために呼びかけられ、集まり、そして長八への畏敬の念を示すかのような仕事を残していった。建築請負契約の中で、一部分だけを取り出して直接職人さんにやらせるなどということはないのだけれど、でも左官屋さんの神殿のごとき美術館を作るにあたっての物語を、無数の職人の手の跡を残すという形で作ることが石山氏の狙いだったのだと思う。今もこの美術館は左官職人の巡礼地のごとき場所である。そして僕たち建築に携わる人間にとっても一つの特別な場所であると思う。建築の作り方は決して表層のデザインだけの話ではない。その深淵にあるものを引き出し物語を紡ぐ、それこそが建築という行為だと思うのである。果たしてこれをAIができるのか。それはAIが書いた小説に人間が感動できるのかの問いに同じような気がする。そしてもしそうなれば、もう両社の差異はなくなってしまう時なのかもしれないなどとも思うのである。

2018/04/02

今日から新年度がスタートした。毎年のことであるけれど、今年もこれまでバイトなどで参加してくれていた滝本君が正社員としてスタートするなど、なんとなく目新しい雰囲気に包まれる楽しい季節である。あいにく桜はほぼ散ってしまったけれど、新しい人生のステージを楽しみながら進んでいって欲しいと思う。

19時、東京都墨田区にて計画中のKさんの家のリフォーム打ち合わせ。マンションの4階にある住宅の全面スケルトンリフォームである。特に断熱性能に問題があるマンションということで壁と一部の天井の吹き付け断熱を施すなどの対策を考えている。今日は電気設備関係の確認にやプランや造作家具の変更点について図面やサンプルなどを用いての確認をしていただいた。21時ごろ終了。

2018/03/31

午前中は、東京都杉並区にて設計中のUさんの家の打ち合わせ。今日は2回目の基本設計プレゼンである。ますいいで実際に造った家を見てみたいとのご要望だったので、ちょうど昨年末に完成したばかりのさいたま市にあるYさんの家をご案内することにした。10時、川口駅で待ち合わせをしてYさんの家に向かう。約1時間ほどであろうか、Yさんご夫妻のご丁寧なご説明の下で家づくりのコンセプトなどに触れていただくことができた。上の写真は、リビング上部のすのこ吹き抜けの様子である。南側に面する開口部からの光を透過する「すのこ床」とすることで、1階のリビングに光を取り込むことはもちろん、1階で使用している暖房の熱気を2階まで届けることができるので家全体が温まるという効果も得られている。下の写真は造作のキッチンだ。ガスコンロはYさんこだわりのハーマン「ビルトインコンロ・プラスドゥ」で、壁のタイルはセルフビルドで貼られている。大工さんが作ってくれた箱にステンレスの天板を乗せるというシンプルなつくりの造作キッチンの事例である。

20180331.jpg

20180331-2.jpg

住宅見学を終えて、事務所にて打ち合わせ。前回のご提案からの変更案をプレゼンして終了した。

Yさんの家は出来上がって数か月である。ライフスタイルに関する雑誌のライターさんをしている奥様のご実家に隣接する土地に新築した住宅で、ご実家との間には小さな畑が営まれている。畑の世話はお父さんの仕事になっているとのことである。埼玉県のさいたま市、決して田舎とは言えない都会の住宅地なのだけれど、でもとても魅力的な親族一体となった暮らしがまるで田舎の農家のごとく実現しているのが素晴らしいと感じた。人の幸せとは何なのだろう。お金はそこそこ必要だけれど、お金があっても出来ないもののほうが確実に多い。子供の笑顔だったり、親の笑顔だったり、季節の移ろいを感じる事だったり、自分で育てた野菜を食べる事だったり、光を感じたり、風を感じたり、花の香りを感じたり、そういうことのほうが実はとても大切なことであると思う。

2018/03/29

10時、埼玉県川口市にて新築住宅を検討中のTさん打ち合わせ。今回は初めてのプレゼンテーションということで、プランと1/100模型を用いてご説明させていただいた。敷地は区画整理事業でできる長方形の綺麗な成型地である。東側に道路があり南北は家に囲まれてしまうことが予想されるので、2階にリビングを配置し南からの光を取り入れ、かつ東側にも開放的なプランとしている。2階の上部にはロフトを配置し、ロフトに対して一部吹き抜けを設けている。敷地がそれほど広くないので、上方に対して開放的に設計することで広がりのあるプランとなるようにしている。

下の写真は千葉県に造ったMさんの家である。2階のリビングに格子床のロフトを設けた。ロフトとリビングがつながり、広がりのあるプランとなっている。2階リビングのロフト、なかなかの魅力なのである。

20180329.jpg

2018/03/28

埼玉県川口市にて進行中のHさんの家の現場確認。現場では大工さんによる木工事が進行中である。ベテランの大工さんと新人の大工さんが二人で作業を進めていて、今は2階の天井下地を作っている。週末にはサッシが搬入されるので、今度は外部の工事に移る予定だ。今日は玄関回りの外壁の仕上げや、階段の作り方などについての現場確認を行った。

午後、埼玉県和光市にて設計中のKさんの家のスタディー。プランの変更についての方針確認など。

夕方、東京都国分寺市にて設計中のJさんの家の模型作成。週末の打ち合わせに向けて1/50の模型を作成している。今は基本設計の最終段階で、大まかな部分での確認をしていただいたらいよいよ実施設計に移行する予定である。実施設計というのは基本設計で考えてきたことを実現するための設計である。構造事務所との打ち合わせや設備器具の選定などもここで行うし、サッシなども一つ一つ品番まで決めていくことになる。照明器具の選定や配線の計画などもおこなっていく。とにかく作るための図面作成なので、すべてが決まっていないといけないのである。

2018/03/27

朝礼終了後、各プロジェクト打ち合わせ。東京都杉並区にて設計中のUさんの家のプラン作成では、狭小地に建てる木造2階建ての住宅のプランのバリエーションを検討している。限られた面積の1階に寝室ともう一つの個室を作るためにはどうすればよいか、階段の位置はどこに配置すればロフトまで最も効率よく上ることができるか、家事動線を効率よくするためにはどうしたらよいか、などなどについて3つのパターンを考えている。さてさてどれが一番よくなることやら、もう少し作業を進めてみよう。

11時、埼玉県川口市にて事務所建築を検討中のSさん打ち合わせ。すでに何十年も不動産屋さんを営んできた大先輩の事務所移転に伴う新築である。こういう地元の依頼をされるということはとても嬉しことで、やっぱり建築設計事務所にしても工務店にしても、地元に信頼されないのではやっている意味がないわけであるので、きちんと答えていかなければいけないと思うのである。ここでは最も安価でできそうな鉄骨構造の事務所建築を考察している。鉄骨構造にする理由はやはり内部空間の無柱化なのだけれど、コストは押さえたいというのがSさんのご要望だ。鉄骨構造にはラーメン構造とブレス構造の二種類があるけれど、コストが抑えられるのはやはりラーメン構造であろう。この構造は柱と梁の接合部の強度で地震に対して対抗する工法で、ワンフロア40坪2階建ての本計画の規模であれば6本程度の柱で構築することができる。いわゆるもっとも一般的な鉄骨構造の形式で、街で見かけるスーパーでも倉庫でもどこでも採用されている手法だ。外壁はALCが最も安価であると思われるけれど、意匠的な配慮から金属系のサイディングなどを採用できるように考えている。コストを抑えて、でも街で話題になるようなデザインの建築を作ってほしいとのご要望・・・、なかなか難しいのである。

2018/03/24

朝礼終了後、千葉県流山市にて設計中のIさん打ち合わせ。今回は実施設計の2回目の打ち合わせということで、展開図などを用いての詳細打ち合わせを行った。Iさんはインテリアや家具関係のお仕事をされている方で、とてもセンスが良い。プランの打ち合わせをしていても暮らしの様子がしっかりと描かれているようで、家具や照明の様子までイメージしながらの打ち合わせとなる。自分の家を自分で考える、そんな種族のクライアントであるのだ。

自分の家を自分で考えることができる人は意外と多い。ますいいには、大手設計事務所、ゼネコン、ハウスメーカー、アーティスト、カメラマン、ライターさん、カフェを運営している人・・・とにかく建築が好きな人が来てくれる。建築が好きな人は大体理想の家も考えられることが多くて、だからこそクライアントと建築家が二人三脚で家づくりを行うますいいに興味を持ってくれるのだと思う。以前津田寛治さんという俳優さんの家を作った。下はそのあとインタビューをさせていただいた時の手記である。楽しい家づくりの結果、こんな風に思えるのが一番だと思うのである。

・・・・・・・・・・・

建築家をやっているといろいろな人と出会う。年齢も職種もそれぞれで、打ち合わせをしていると、いろいろなお話が聞けてとても楽しいし為にもなる。時には有名人もやってくる。7年ほど前に俳優、津田寛治さんのご自宅を建てた。映画やテレビドラマなどで活躍されている方でご存知の方も多いだろう。津田さんとの出会いは、奥様がさんかくの家が掲載されている雑誌「住まいの設計」をご覧になった時に、モルタルで作ったキッチンやお風呂の写真を見て気に入ってくれて、ご連絡してくれたところから始まった。(さんかくの家では名前の通り三角形の建築形状を採用しているのだが、その形状に合わせて、左官屋さんがモルタルで作ったキッチンやお風呂を配置している。)
津田さんは当時、すでに土地を購入して、不動産屋さんに紹介してもらった設計士さんに図面を書いてもらうところまで進んでいる状態だったのであるが、その設計士さんに塗り壁で仕上げをして欲しいと依頼したところ、「この土地では地盤が悪いから塗り壁の仕上げは無理です。クロスを貼らなければ仕上がりません」と言われて、決別してしまった時に、たまたま新宿パークタワーにあるリビングデザインセンターオゾンのライブラリーで雑誌を見つけて、ますいいに来ていただいたというわけである。

津田さんは当時のますいいとの出会い、印象をこのように話してくれた。

「僕の家づくりには、設計を押し付けるような建築家は絶対に入れたくないと思っていました。そういう建築家って他人の住む住宅を自分の作品としてとらえているじゃないですか。でもそれは傲慢なことでしかないと思うんです。住宅は決して建築家の作品ではないと思います。住宅はあくまでそこで暮らす人のものなんですね。だからこそ、住む人の希望とか使いやすさとかをないがしろにして作品性を高めることに偏りすぎてしまうことは傲慢だと思います。建築家の人がもしクライアントの希望を聞いていて、でもやっぱり後々後悔するよって思っても、お客さんがそう望むのであれば思うようにやらせてあげればよいと思います。それで、どうしても嫌になったらやり直せばいいと思います。僕たちは、デザインを押し付ける建築家ではなく、工務店なんだけれどセンスのわかるところを探していたんですね。その考えにぴったり合う会社を見つけたのが、たまたま(ますいいリビングカンパニー)さんだったんですね。はじめての打ち合わせで、妻がこれまで依頼しようと考えていた他の設計事務所が書いた図面を見せて「これでお願いします」というようなことを言ってしまったときに、さすがに失礼だろって思ったのですが、増井さんが「わかりました」と言ったんですね。あの時の増井さんを見て、クライアントの要望を寛容に受け入れるところと、それでも自分を崩さないところを持っているなあと、つまりとても自然体だなと思いました。施主の思いを実現するという設計手法は、ともすると設計という行為に対してモチベーションが感じられなくなる場合もあると思います。でもそこをうまくバランスをとって、それを楽しんでくれるのがすごくよかったんです。」

津田寛治さんは僕の印象では、芸能人と呼ばれる人が持つであろうとイメージされる派手さとか、傲慢さとかとは無縁の人である。むしろ普通の人よりも自然体かもしれない。乗っている車は、ぼろぼろのワゴン車にニコちゃんマークのペイントを施しているような車だし、服装だってセンスの良い普通の大学生のようなもの。とにかく見栄を張るような行為とは無縁の人だ。僕は当時、津田さんのことを知らなかった。もともとあまり芸能界に詳しいほうではない。だから僕も自然体でいられたのだろう。知っていたらもっと緊張していたと思う。

素朴な人だからであろうか。この工事では素材そのものを表現することを求められた。塗装等で仕上げることは最小限にして、なるべく素材のままの表情を大切にしたいというのである。例えば外壁では、吹付下地として施工するモルタルのままで仕上げてほしいという要望があった。普通では割れてしまうモルタル下地をどうしたら割れないようにできるかの苦悩の末に、ファイバーネットを敷きこんだりモルタルそのものに繊維を混ぜ込んだりの工夫を施したりもした。工事をするときにも言ったけれど、これは僕にとっても実験的な試みだった。ヒビだらけになってしまうかもしれないとの不安を持ちながらの工事であった。今回、7年がたって現場に行ってみて、壁が割れていないことには正直驚いたが、何よりもそのモルタル仕上げの風合いが経年変化と共にさらに良い雰囲気になっていたことがうれしかった。そんな津田さんにとっての住宅とは、どのようなものだったのかを聞いてみた。

「俳優って特殊な仕事のように思われるけど、実は普通の仕事と変わらないんです。一部のスターは違うかもしれないけれど、僕たちのような役者は現場に行って、衣装に着替えて、せりふをしゃべって、お疲れ様でしたと、まるで大工さんみたいに働いています。日本中のいろんな現場に行って、その現場の仕事をします。だから僕が家を建てる時も俳優だからと言って特別なことを考えていたのではなく、普通のお父さんと同じように、ただただそこで育つ子供のことを考えていました。僕の中では子供たちがたくさん集まる児童館みたいな家にしたいと思っていたんです。決してファッショナブルなものではなく、どちらかというと暖かいもの。僕にとって家というものは、その場だけの完成作品ではありません。住んで、何十年もたって完成するものです。できた時はすごくきれいだけれど、20年たっていろいろなところが汚れてきたらみすぼらしくなるものではなく、時間がたって使い込んだ時に魅力があるようなものが良いと思います。この家ももう7年がたっていますが、先日も通りすがりの人が、この家を建てた人を紹介してほしいと言ってきましたがこういうのはうれしいですね。
僕は特にこの家のモルタル仕上げの外壁面が大好きです。吹付とかしていないただのモルタル仕上げですがこのラフな感じがすごく良いと思います。ラフさって要求することがすごく難しいと思います。映画のカメラワークでもそうなのですが、映画監督がカメラマンさんにわざと揺らしてくれと言うと、すごくわざとらしくなってしまうんです。でもカメラマンが一生懸命とっていて、でもちょっとカメラが揺れてしまった時はとてもかっこよく仕上がります。壁も一緒で、すごくきれいにして欲しくはないんだけれど、わざとムラムラをつけられるとわざとらしすぎて嫌なんですよね。増井さんは僕がそんなことを行った時に「ようは吹付の仕上げの下地程度にすればいいんでしょ」と言ってきましたね。結果とても好きは風合いに仕上がりました。

左官屋さんも大工さんも、左官の魅力とか木の魅力に取りつかれているんですね。そういう人を見ると本当に幸せだと思う。大好きな仕事をして夢中になっていられるのは見ていて気持ちが良いですね。実は昔は水道工事のアルバイトをしていたこともあるんです。小いさい現場だと、親方が途中でほかの現場に行ってしまって、庭の裏の土間コンクリート工事を任されたりするんです。そういう時にコンクリートの金鏝仕上げをやったりするのは病み付きになります。コンクリートとか土壁、粘土、あと鉄がさびた様子などは取りつかれると病みつきになるんです。そういうことに取りつかれて仕事にしている方は本当に幸せだなと思います。」
津田さんは家づくりの最中もとても熱心に自分の希望を担当者の田村に伝えて、まるで自分が設計者のように参加していた。

「映画を作ることと、家づくりはとても似ていると思います。僕は映画監督もしています。本業は俳優だから、異業種監督と呼ばれるんですが、この異業種監督の場合は本当に家づくりに似ていると思います。つまり映画監督は、家づくりの場面のお客さんみたいなものなんですね。専業の映画監督ではないから、撮影などに関する技術は何も知らないけれど、いろんな映画とか本を読んだりして、すごく知識はあります。そしてこんな映像を造りたいという強い思いはあるんです。家を建てている間は、自分の家というよりも一つの作品作りに参加している感じでした。この家の特徴は先ずは大きなウッドデッキ、そして斜線制限の関係で屋根がとんがっているところですね。基本的に家づくりは妻にお任せと思っていたんですが、あるとき「往々にして旦那は意見を言わないけれど、それがだめな家をつくてしまう原因である」と何かの本に書いてあったのを読んだんです。それで口出しをするようにしました。

思い出に残っているのは、外壁に丸い窓を配置したことと、玄関のトイレのところに同じ大きさの丸い窓を開けたことですね。担当者の田村君に丸い窓を開けてって言ったら、始めは小さい窓の絵が描かれてきました。そうじゃないと思ったので、大きな窓をつけってって言ったら、どーんとつけてくれた。これも映画監督と似ていると思う。映画監督がああしてこうしてと言って、現場のスタッフが一生懸命頑張ってくれて、思った通りの画が撮れた時と同じなんです。あとアトリエの本棚もそうでしたね。素材をただ切り取ってざっくりしたもの、きれいに仕上げないで欲しいって言ったら、厚い合板の積層小口を表しにして、切り出したそのままみたいで、それがすごくかっこよかったんです。僕は最近いつもそこで過ごしていますね。素人の僕がいろいろと意見を通したのだから、実際には多少の後悔はあります。でも本当に嫌ならあとから直せばいいんだし(笑)。僕は意見を言って、よくその後に「もし嫌になったら後から治りますよね」と、いつも言っていたんですよ。この窓あとから大きくできますかみたいに。そしたら田村さんが嫌な顔をするんですね。そういえば、階段の真ん中に段板を支える鉄骨の柱があって、俺は白だと思ったけれど、田村さんは絶対黒だと言いました。僕は正直全く黒くする意味が分からなかったので、せめてグレーにしませんかって言ったんです。結局妻と相談して黒にしたんですが、あれは黒が良かったと思っています。とてもいい感じになっているんですね。」

そういえば、津田さんの家の完成間近の時に、リビングの丸柱に棕櫚縄を巻いて存在を和らげようとしたことがあった。完成した姿を見て喜んでもらおうと思い、津田さんには黙って縄を巻いておいたのだけれど、引っ越しして数日でその縄はほどかれてしまっていたことを思い出した。どうやらその縄の表現は、引っ越しを手伝ってくれた若手の俳優にしか受けなかったそうで、しかも縄が好きな幾分変わった性癖を持っている方だったというから、仕方がない。縄を巻くときは縄を持って柱の周りを何十周も歩きながら締めていくのだけれど、その数日後に奥様と二人で柱の周りを何十周も歩きながらその縄をほどいていたというから、思い出すと思わず吹き出してしまう。通常は家づくりにおける映画監督とは僕たち設計者のことである。でも津田さんにとって、自分自身が監督をやっている感覚のほうが合っていたのだろう。最後にもう一度家づくりをするとしたらどんな家を造りたいか聞いてみた。

「基本的にあの家は気に入っているので、もう一度建てたいとは思わないですね。今の家はたまにはっと思う時があるんです。仕事が終わって帰ってきたとき、外から見て丸い窓があって、そこから明かりが漏れていて、そんな姿を見ていると温かいなと思います。僕は建築雑誌に載るような家は好きじゃないんです。かっこいいかもしれないけれど、住んでみたら大変だろって思う家は嫌いです。たまに人の家にお邪魔したりしたときに、デザイン的にはそんなに肩ひじ張って頑張っていないけれど、なんかいいなと思う家があるんですね。奥さんが家事をやりやすくなっていて、家族が自然に使えている感覚が滲み出しているような住宅が僕は好きで、今の僕の家もそういう風になっていると思います。だから、建て替えようと思うことはないですね。」

・・・・・・・・・・・・・・・

13時過ぎ、娘の中学校の吹奏楽部定期演奏会鑑賞。こういう行事に足を運ぶことは極端に少ないのだけれど、今回だけはだいぶ前から手帳に記載されていた。中学校卒業するという一つの区切りである。一歩一歩大人になる嬉しさと、同時に何となくの寂しさを感じる複雑な心境だった。ちょっと想像した娘の結婚式、これは相当やばい気がする。気が重いので想像するのをやめておこうと思う。

2018/03/22

午前中は、埼玉県富士見市にて進行中のMさんの家の現場確認へ。Mさんの家は公園に面した住宅地に建つ木造2階建ての住宅で、これまでセルフビルドを取り入れながら自由な家づくりを進めてきた。現場につくとセルフビルドの最中であろう塗装済みの木材などが積まれている。これからバルコニーの手すりなどになるというので一緒に行った和順君とともに積みなおし、その周りにあった不要なものをトラックの荷台に積みこんだ。現場の終わりかけはさまざまな雑物があふれていることが多い。脚立やらベニヤ板、木の切れ端や余った長物材などなど、一度ではとても積みきれそうもないので、取り合えずは詰めるだけ積み込むことにした。

内部に入ると、まずは造作で作られた階段が目に入る。クライアント自らが貼ったラワン合板仕上げの壁も面白い。ステンレス天板の造作キッチンも全体の雰囲気にとてもよくあっている。外壁にはこれから自分自身で取り付けようとしている屋根の下地金物があったりの姿も特徴的だ。工事が終わって完成ではなく、そのあとも少しずつ作り続けたいというクライアントの思いが形になっている。数日後に完成写真を撮影するので楽しみにしておいてほしい。

夜、某大学の先生と一緒に南極の氷でウイスキーをいただく。南極の氷というのは、細かい空気がたくさん入っていて、ウイスキーを注ぐとぱちぱちと音をたてながらその空気が出てくる。氷の中に閉じ込められた空気だから当然その氷ができたときの空気ということになるわけで、ちなみにこの氷の中に閉じ込められた空気は約6000年前のものということになるらしい。6000年・・・僕が学校の授業で習った歴史よりも前の時代、要するに全く想像できない時代の空気とともにウイスキーを味わう、なんとも贅沢な時間を過ごすことができた。

20180322.jpg

世間はトランプ大統領の人事だの、安倍総理の土地問題などとても騒がしい。特に安倍総理の問題など、もうすでに関係していたことが明白になってしまっているような状況なのに、いったい何をやっているのかの感である。人の世は常にこういう話題に事欠かない。これはいつの時代も同じであろう。僕はこういうことになるべく無関係でいたいと思う。十何年かタルの中で熟成していたウイスキーのように、ゆったりと生きて行ければと思うのである。

2018/03/21

午前中は埼玉県和光市にて計画中のKさんの家の打ち合わせ。Kさんの家では中庭型の住宅を検討している。敷地のコーナー部分に庭を配置し外構の塀と建物で取り囲むような中庭が良いか、はたまた建物の中央部分に凹みを作りその部分に庭を配置する形式が良いか、二つのプランを作り比較してみての打ち合わせとなった。

中庭というのは、外部を生活の中に自然に取り込むことができるとても有効な手段である。いわゆる南側に開けた庭を住宅の隣に造ったとしても、都会の狭小地ではプライバシーを確保することに配慮をしなければ、結局は暮らしと切り離された庭となってしまうことがある。前面道路にめったに人が通らないような敷地ではそんなことはないけれど、常に人通りがあるような場所ではプライバシーへの配慮がとても大切な要素となるのである。下の写真は凹型の中庭である。庭の大部分はウッドデッキを製作し、一部に緑を配置した。ウッドデッキはリビングと同じ高さでつながることができるので、リビングに大きな広がりを与えている。

20180321.jpg

14時、東京都台東区にて計画中のSさんの家の打ち合わせ。いよいよ工事に向けて最終契約を取り交わすことができた。

2018/03/19

朝礼終了後、埼玉県朝霞市にて土地の購入を検討しているTさんご夫妻のご相談で、現地にて打ち合わせを行った。場所は新座市と朝霞市の境で、比較的自然が残る住宅街である。地主さんが所有する土地の一部を譲り受けることができそうだということで、その土地だとどのような住宅が建てられるのかなどについてのアドバイスを行った。

夜、東京都墨田区にてリフォームの設計を行っているKさんご夫妻打ち合わせ。21時ごろまで。

2018/03/17

朝礼終了後、東京都新宿区にあるリビングデザインセンターオゾンにて打ち合わせ。今日は東京都杉並区にて新築住宅を検討しているUさんの家の打ち合わせである。1回目のプレゼンということで、いただいたご要望に合いそうな暮らし方のご提案をさせて頂いた。ここは都内の計画らしい狭小地、しかも高さに関する厳しい規制もある地域だから、限られた空間の中でどのように魅力的な場を生み出すかの工夫が設計のポイントとなる。暮らしの中に取り込むことができそうな緑、天井高さを工夫することによる広がり、光の取り込み方、生活導線などなどに気を配りながらの設計となった。

ご主人が初めの打ち合わせの中で、「夜遅くに帰ってくるときに迎え入れてくれるような、ぽわっと明かりが漏れているようなそんな家がいいな・・」のような言葉を発していたのだけれど、僕はその言葉がとても印象に残っている。駅から帰ってくる道はいつも決まっている。その道をちょっと歩いてみると、なんとなく家の顔、正面がわかる。迎えてくれるような家、家族の暖かさを感じる家、そんな家となるように次の提案も考えてみたいと思う。

2018/03/14

10時、4月からますいいに参加する滝本君来社。無事卒業を決めて、後は卒業式、旅行とすごしたのちにますいいに参加してくれることとなっている。卒業論文にセルフビルドを取り上げ、セルフビルドを行うことが家づくりの中でどのような効果があるのかを、ますいいのクライアントに対するアンケートなどを参考にまとめ上げた。こんなことをしてくれるスタッフなどこれまでいるはずもなく、どのような論文になったのか読むのを楽しみにしている。まあ、大学4年生の論文なので過大な期待は禁物だとは思うのだが、それでも純粋にうれしい気持ちはあるのである。

15時、埼玉県川口市にて計画中のHさんの家のリフォームに関する契約。今回の契約ではリフォームをする前の段階の解体工事や不要なものを処分などについて、そして防水や穴の開いた外壁を埋めるメンテナンス系の工事に関しての契約を行った。もともとはお父さんが水道工事やさんを経営されていて、今でも弟さんがその仕事を受け継いでいる。約60年間の営業行為のなかで次々と広がる設備や施設をメンテナンスすることなく維持してきてしまい、だいぶ傷んでいるものもあれば、すでに倒壊寸前という状態のものまである。いくらなんでもそのままの状態でリフォームをするわけにもいかないので、ある程度の物量を減らす、つまりは整理整頓をすることを最優先としたわけである。

建築や不動産の仕事をしていると、このように生活の中でたまったものの整理整頓を依頼されることがある。それを直接的に依頼されなくとも、結果としてそれを行うことがある。こういう時はどれだけ作るかよりもそれだけ減らすかを考える。この思考はスプロール的に広がり続けた街をどのように縮小させるかにつながる、つまりは人の暮らしの場の整理整頓の手法ということになるであろう。近未来の廃墟を描くSFの中の街並みはたいてい混とんとしたカオスである。それは決して望ましい状況ではなさそうだけれど、それでも多くの人がそんな未来を予想してしまってもいる。減らすことの難しさ、これをしみじみと感じるのだ。

2018/03/13

今日は、埼玉県蕨市にて作ったAさんの家のリフォームの現場での「オトナ・リノベ」なる雑誌取材立ち合いに、担当の和順君と一緒に訪れた。この住宅はご両親から受け継いだ古い木造住宅を、住宅兼カフェにリノベーションしたものである。クライアントは自分らしくゆったりとした暮らしを営む場としての住宅を作り上げ、その暮らしのなかで無理なくカフェの運営をする予定である。今日も数種類のハーブを混ぜて作ったハーブティーや、カステラの代わりに何かを使って豆乳のムースをかけてあるラズベリージャムのトライフル(あんまり詳しくないので記憶もあいまいである。)、そして僕がゴマかと思ったら全く違って、コーヒーの粉をまぶしたほろにがのボーロなど、これまであまり口にしたことのない手作りのお菓子をふるまってくれた。写真はその撮影をしている取材陣の方々だ。皆Aさんの心のこもったおもてなしを楽しみつつ、楽しい時間を過ごすことができた次第である。

20180313.jpg

団塊世代とそれよりも少し下の世代、つまり55歳くらいから上の先輩方の過ごし方は本当に人それぞれだと思う。埼玉県川島町で作ったアスタリスクカフェでは早期退職をしたご主人と奥様のカフェ兼住宅を作ったけれど、仕事中心の人生を少しアレンジしてもよいかなと考えたりの余裕が出てきたり、逆に余裕ではなくってそうしなければならない状況になってしまったりの年代なのかもしれないのだと思う。カフェというのは良い手段で、嗜好的傾向の近い人が集まり、豊かな時を過ごすことに適した行為なのかもしれない。そういえば僕が好きだった長野県にある入笠小屋のご主人だった故・小間井さんも同じような匂いがした。石山先生が大好きな気仙沼にあるジャズ喫茶ベイシーの菅原さんも同じだと思う。始まりのタイミングは違えど始めようと思ったその時に、自分の価値観や嗜好、その暮らし方自体を表現し、そこに集う人と共に過ごしたい、そんな行為の一助となる建築が必要なのだろう。越生町にある山猫軒も面白い建築である。そんな行為の一助となる建築だからこそ面白いのだと思う。

2018/03/12

朝礼終了後各プロジェクト打ち合わせ。

10時過ぎ、埼玉県川口市にて設計中のTさんの家の打ち合わせ。Tさんの家のプロジェクトでは、ご両親が暮らしている2階建ての住宅の2階部分をリフォームして、玄関だけ共同利用の2世帯住宅として利用できるように計画を進めている。今回の打ち合わせでは、キッチンなどの設備に関する詳細事項と、全体の見積もり調整について確認を進めることができた。2011年の東日本大震災以降、核家族化でバラバラになるのではなく、逆に親の家の近くに住んだり同じ家をリフォームして暮らしたりの事例が増えた。集まって住む、これは昔当たり前だった共助の姿であり、個人主義の浸透した現代では逆に珍しいスタイルとなっている。老人介護やら子供の保育園やら、一緒に暮らしていれば助け合えることもたくさんある。合理的かつ心も豊かになる、なかなか良い解決策であると思うのである。

19時、東京都板橋区にて新築住宅を検討中のSさん打ち合わせ。現在基本設計中ということで、地下1階、木造3階建てのプランをご説明させていただいた。21時ごろまで。

< 1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11

201807

1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
page top