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増井真也日記

2021/11/12

住宅の部材の中で好きな色はと聞かれて皆さんは何を思い浮かべるだろうか。
先日ある講演会で街の中の好きな色をたずねられた。久しく国際的に利用されているマンセルの色見本の中から選ぶという話だったが、好きな色を見本帳から選び出す感覚には小小疑問を感じた。肌触り、素材感、暖かさなどの様々な条件によって好きな色は決まるのではないか、の疑問を感じたのである。この疑問に対して講師は町の色を探る遠景の議論では住宅の素材を探る近景の場合のように肌触りなどは含まれない、あくまで数値的な色の感覚であるとの答えを返した。

住宅の中にある色、それはまさに素材感である。
浜田山の家では床に赤みのある杉を使用した。この無垢の木は時間とともに更に赤みを増し、なんともいえない風合いを醸し出すだろう。天井に見える松の梁、階段の板、それぞれの素材が変化した結果、それが味わいとなるのである。木の色は出来ればペンキの色ではなく経年変化を楽しみたい。放っておくと腐ってしまう外部については適切な処理を施すことが必要だが、すくなくとも家の中の木の色は好きな素材の色であって欲しいと思う。
キッチンの面材に利用したモルタル仕上げもその自然な風合いが木の内装とよくマッチしている。
壁の白は出来ればビニルクロスやペンキではなく漆喰の白であって欲しいということから石灰クリームを採用した。その違いは触ってみれば一目瞭然であり、また調湿作用などの性能によって、快適性も大きく異なる。特に近年の気密化した住宅においては居心地の違いは顕著であるのだ。

情報化社会であるので様々な素材のサンプルや見本帳を世界中から取り寄せることが可能である。イタリアの石、ベネチアンスタッコ、自然風塗料、古びた風合いのレンガ、私たちが見たこともないような情報までもがクライアントによって提供されることもあるのが実態だ。しかしちょっと冷静になってほしい。ショールームをつくるわけではないのである。あくまであなた自身が居心地の良い空間が出来れば、それが一番良いのだ。

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