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増井真也日記

2020/11/12

午後、川口市のとある住宅にて登録文化財の申請に関する打ち合わせを行う。登録有形文化財というのは、平成8年10月1日に施行された法律によって,保存及び活用についての措置が特に必要とされる文化財建造物を,文部科学大臣が文化財登録原簿に登録する「文化財登録制度」である。この登録制度は,近年の国土開発や都市計画の進展,生活様式の変化等により,社会的評価を受けるまもなく消滅の危機に晒されている多種多様かつ大量の近代等の文化財建造物を後世に幅広く継承していくために作られたもので、届出制と指導・助言等を基本とする緩やかな保護措置を講じるという特徴がある。今回の計画では、申請した建物をカフェなどの形で利用することで、歴史観のある街並みの魅力の醸成を目指したいと考えている。

建築はもうあまり造らないほうが良い、というのは誰でもわかっていることである。でもなぜか日本という国はいまだにスクラップアンドビルドを繰り返す志向が強く、歴史や文化がいかにその国の発展のために大切なのかをわかっていながらも、ついつい経済効果優先で壊してしまうという選択をしがちなのが実情だ。この傾向は国という大きな単位でも、民間所有の小さな住宅でも同じことである。とにかくついつい壊してしまうのだ。壊した後にできる建物はたいてい薄っぺらいものになる。誰の目にも同じように映り、決して不便でもないのだけれど、特に印象にも残らない、そんな建築がそんな街並みを作り出す。だからあんまり造らないで何とかできないかを考えるようにした。壊さない、そして造らない建築家、それもとても大切な姿だと思うのだ。

文化財の登録にあたって芸大の小林先生と協働している。小林先生と話しているととても楽しい気分になる。屋根の上のたんぽぽを見て、「あれってなんかいいよね。雨漏りしていないならあのままでもいいんじゃない」。壁の板が腐ってはがれて中の土壁が少し見えちゃっている姿を見ても、「この土壁が少し見えているところがいいんだよね。こういうところはなるべくそのままにしよう。」とにかく普通のメンテナンスとは違うのだ。僕たちが普段何気なく街を歩いているときに魅力と感じるものは、決してきれいに塗りなおされたペンキではない。道端に生えるたんぽぽが屋根の上に生えている様子、そこにいる猫、そんなものについつい目を奪われるのだ。魅力的な街を造りたいと思う。そしてそういう街を子供たちに残してあげたいと思う。僕たちはそういうことができる数少ない人種なのだ。

202011

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