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増井真也日記

2019年11月アーカイブ

2019/11/05

朝礼終了後、東京都豊島区にて進行中の本納寺の現場の確認へ向かう。お寺の本堂の瓦の葺き替え工事ということで、まず初めに屋根の足場をかけるところからのスタートである。住宅のように枠組み足場が使えるわけではなく、単管パイプを組み立ててその上に足場板やベニヤを敷きならべるというような昔ながらの足場の作り方を採用している。大きな屋根を支える軒の出が大きかったり、お墓の方に行くための安全通路を確保しなければいけなかったりの事情もこの工法ならば解決できるというわけだ。

僕も屋根の上の宝珠のところまで登ってみたが、本当のてっぺんまで登ってみると予想以上に高く感じる。実際の高さは10mほどだろうか、この視点まで来ると遠くの方までよく見えるから気分が良い。足がすくむ感覚というのはあんまり味わうことが無いけれど、さすがにちょっと怖かったのでロープをつたって降りることにした。宝珠は鋳物でできている上に、銅板で仕上げの装飾を施している。これを瓦製の宝珠に丸ごと交換するか、はたまた鋳物の芯の部分は残して銅板の装飾だけを張り替えるか、試案のしどころである。

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夜、東京都文京区にて新築住宅を検討中のKさん打ち合わせ。今日は第1回目のプレゼンテーションということで、Kさんご自身が造ったプランをトレースしたものを用いて、配置やプラン、ボリューム等のお話をさせていただいた。

2019/11/04

昨日からの福島県土湯温泉旅行二日目。自然の中にあるこじんまりとした湯を満喫し、今日は福島県の磐梯山周辺の観光をして帰ることにした。まずは先日の建築士事務所協会の旅行でも足を運んだ浄土平という火口に行ったのだけれど、何度見てもなんとなく背筋に寒気が走るような恐ろしさを感じてしまう場所である。浄土平のパーキングから数百メートル先には硫黄の煙が噴き出している山肌が見えるし、そこらじゅう一帯が硫黄の匂いで充満しているし、火口はすり鉢状のいかにもの火口だし。火山性ガス注意!!なんていう看板があちらこちらにあるけれど、そんなもの関係なしに観光客が大勢いるのもこれでよいの?の気分になる。ここでもし噴火が起きたらなんて想像をしてしまうと、何とも不安になってくるのだけれど、こういう自然の変化が豊かさとなって日本の風土が造られてきたこともまた認識しなければいけない事実であるから、自然の恩恵と脅威を同時に感じるのである。

続いて五色沼へ足を運ぶ。ここは火山の成分の影響で様々な色の沼があるところで、特に青沼の鮮やかさに目を惹かれた。ここにも熊注意!!の看板があちらこちらについているのだけれど、これまた注意するったってどうしようもないわけで、再びの疑問を感じながらの散策であった。日本人は危険を周知しながらも対策をすることなしにそれを受け入れる人種なのか???と思うような光景ともとれるし、そこまで注意しなくともそれほど危険がないのに、過剰に看板などを付けすぎているのかなあなどと考えたりもする。現に僕が中学生の時に山岳部の所属していて北海道の大雪山で熊と出会った時には、そこにいた登山者は皆熊と出会えたことを歓び、写真を撮っていた。熊も何かをむしゃむしゃ食べていたけれど、襲ってくるような雰囲気はまるで見せなかった。今から30年ほど前であるが、まだ自然と人間の間に互いに入り込まない領域のようなものがあったのかもしれないし、野生の動物が人間の食料などを味わうこともなかったのかもしれない。

とまあこんなことをずーっと考えていても仕方がないので、自然を満喫することにする。僕も現実逃避の観光客になるしかないのだ。ひとたびそうなれば、ここには素晴らしい自然がある。コケも綺麗だし、沼も綺麗だ。空気もとても綺麗で澄んでいる。豊かな自然をこの先も守っていきたい、そんな気持ちが湧いてくるのである。

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2019/11/02

午前中は埼玉県坂戸市にて設計中のYさんの家の打ち合わせ。確認申請の作業を進めながら、金額調整の最後の打ち合わせである。この住宅では内装にビニルクロスを使いたくないというクライアントの意向もあって、大部分の壁にはいわゆるペンキ仕上げを採用している。リビングに面する一部の壁にはモルタルをセルフビルドで施工する予定で、この壁には米松の梁の半割を分厚い棚板として利用する予定である。ペンキ仕上げの部分はシャープな仕上がりそして、それとは対照的なモルタル仕上げのざらざら感を対比的に楽しむことができればよなあと考えている。

これだけモノがあふれている時代において、デザインというのはいろいろな新しいものを組み合わせる事ではなく、いかに余計なものを省いていった結果に何が見えるかという逆説的なアプローチによってのほうが良いものができると思う。途中ちょっとごちゃごちゃした仕上げも、最終的にはきれいに整理されたようで何よりである。いよいよ工事に向けてカウントダウン、楽しみながら進めていきたい。

2019/11/01

今日で45歳を迎える。なんだかいつの間にか年を取ったなあと感じる年が多いのだけれど、45歳というのはそういう感覚になりにくいようで、今年は全く自分の年齢を感じることはなかった。男性の厄年は、25歳42歳と続くけれど、特に大厄と呼ばれる42歳は良くないことが起きる可能性が高いといわれている。加齢による体調の変化とか事故などのアクシデント、この年齢だと子供に関する悩みをあるかもしれないけれど、とにかくいろいろなことを背負っている年齢の始まりのころであるからして、トラブルも起きやすいのかもしれない。そしてその厄年を、多少の健康問題を感じながらも禁煙をしたりの努力の末に、なんとなく無事に通り過ぎることができた僕の場合、45歳になって改めて感じるプレッシャーというものは少なくなってきたのかなあと思うのである。

近所の旧知の75歳の元千葉大学の教授からお母さんの避難器具の製作を相談されている。木造2階建ての住宅内で、水害の発生時に垂直非難をする際にお母さんをおんぶして階段を上がることは厳しい。避難場所に避難をするにも実際に事前の避難をすることができるかどうか不安である。先日の水害の時に、足の不自由なご主人が奥様に世話になったなあの言葉を残し他界したというニュースがあったが、老々介護の状態の家庭では、深刻な問題なのだ。木造住宅の床に穴をあけることは比較的たやすい。2階の天井からチェーンブロックをたらし、ワイヤーモッコで釣り上げれば滑車の原理を利用し小さな力でも垂直避難が可能である。しかもアマゾンで250キロのチェーンブロックを探してみれば、1万円以下で購入することができるではないか。これは安い避難装置だ。

僕と元教授の出会いは18年前である。まだ駆け出しのころに、珪藻土っているのはこんなに健康に良いですよという文章を書き、家庭のポストに勝手に配布させていただいたものを呼んでいただき、当時東大生だったお嬢様からご連絡をいただいて、実際に珪藻土のリフォームをさせて頂いたことがきっかけだった。そのお嬢様は、現在アメリカで弁護士としてご活躍である。奥様は順天堂大学の先生だったがすでに他界された。長く同居していた長女はご結婚して家を出られたようだ。一家でのにぎやかな暮らしを経て再びお母さんと二人になって、それでもこうしてご相談いただけることに何となくありがたさを感じる。住宅に係る建築家は町医者のごとき存在であると思っている。建築を造るという実業を営みつつも、思想を重んじ、ことにあたるときには意を決して実行にあたるというスタンスはとても大切に思う。

小林秀雄の言葉にこんなものがある。
「実行家として成功する人は、自己を押し通す人、強く自己を主張する人と見られがちだが、実は反対に彼には一種の無私がある。空想は孤独でもできるが、実行は社会的なものである。有能な実行者はいつも自己主張より物の動きの方を尊重しているものだ。現実の新しい動きが看破されれば、直ちに古い解釈や知識を捨てる用意のある人だ。モノの動きに準じて自己を日に新たにするとは一種の無私である。・・・」

町医者的な建築家は、まさにクライアントの意向や時代の要請に合わせて、行動の内容を変化させる必要がある。というよりも建築家という職能自体が芸術と時代の要請とにこたえつつ、人々の生活を豊かで安心なものとすることが求められているのだから当然といえば当然なのだ。意識的で思想を持つ人間でありたいと思うと同時に、無私の精神を備える建築家としてこれからも誰かの役に立っていきたいと思うのである。

今夜は、恩師の石山修武先生と会食をした。世田谷村地下実験工房の近くにあるイタリアンで二人でワインを2本も飲んでしまった。なんだかこれはこれで思い出に残る誕生日となった。

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