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増井真也日記

2018年2月アーカイブ

2018/02/15

夕方、川口市のとある商店街で再開発計画の設計をしているWさん来社。再開発というのは僕の仕事とは全く規模が違う大規模事業で、計画から完成まで10年だったりの長い時間をかけて行う町づくり事業である。商店街にある古い小さな住宅のごとき商店が集まり、ワンブロックの大きな塊となって大きなビルを建てる事業だから、そういう工事がなされた後は町は一変してしまうことになる。これまでの古き良き商店街の様相は近代的なビルのファサードとなり、その上の高層部分には多くの集合住宅が配置される。どこの町も均質化し、同じような街並みになってしまいがちな再開発計画の中で、少しでも川口市らしい魅力を生み出すことができないか、そんな相談をするためにますいいまで足を運んでくれたというわけだ。Wさん、実はますいいで家を建ててくれたクライアントである。そんな関係が、こんな関係になるとは・・・。やっぱり人間関係って面白いものである。

街の記憶。そんな活動をしていた建築家が川口市にいた。故・森行世先生である。早稲田大学の先輩でもあり、僕がとてもお世話になった石山修武先生に「TAで教えたことがあるんだよ」なんていうご縁もあって、生前はとてもお世話になったのだけれど、その森先生が街の中で仕事をするときに建物と一緒に必ず造っていたのが街の記憶なる装置であった。実際はどんなものか・・・、それはさまざまな形をした鋳物のオブジェである。現代アート的なものもあれば、鍛造作家さんが丁寧に作った少年少女の造だったりもする。時には車止めだったり、照明塔だったり、時計塔だったり、川口市というところにはとにかく様々な鋳物の作品があちらこちらに設置されている。僕たち川口市民はそれを見て育つ。小さな時から慣れ親しんだ街の風景、ちょっとさびた味わいある風景はこの街の歴史ともいえる。Wさんはそんな街の記憶を再び作り出そうとしてくれている。大きな再開発を計画している人が、そんな風に町を思ってくれていることがうれしい。この先どんな風に進んでいくのかわからないけれど、楽しみに見守っていきたいと思う。

2018/02/13

夕方から東京都墨田区にて設計中のKさんの家の打ち合わせ。今まで住み続けてきたマンションの内装をほぼスケルトンにして、そこに新たな仕上げを施すというリフォーム計画である。今回は計画をご依頼いただくことを決定しての初めての打ち合わせということで、前回お会いした時に伺ったプラン変更のご希望などを反映させたプランをもとに、リフォームの内容について確認作業を行った。

マンションリフォームというのは限られたスペースをどのように魅力的な空間にアレンジするかの提案である。共用部分に手を付けることはできないので、専用部分のアレンジが主な内容になるのだけれど、外部との接点、つまり開口部のしつらえを魅力的なものにコントロールしてあげることはとても大切な行為だと思う。マンションには大概の場合2枚~4枚ほどの窓がある。唯一の外部とのつながりである開口部は、暮らしの中で自然と意識が向かう場だ。さらには光や風を取り込むことができる唯一の部分でもある。開口部をきちんと整えてあげることは、家全体の魅力を高めるとても大切な行為であると思うのだ。今回はアルミサッシの内側に木製の建具を設置する予定である。内部から外部を見るとまるで木造住宅の木製建具のごとに優しい風合いが開口部に存在することとなるわけだけれど、この小さな変化はきっと家全体の風合いをも優しくしてくれるのである。

2018/02/12

建国記念日の振り替え休日であることは、この日記を書くまで気が付かなかった。今日は祭日ということで、僕が部長を務めている裏千家の埼玉県青年部という組織の総会に参加した。会議に会食の組み合わせで朝から夕方までの長丁場である。一年に一度の行事ということで、懐かしい顔に合うこともある。着物を着ている女性達のパワーには少々圧倒されつつも、楽しい時を過ごすことができた次第である。

この中で「独座大雄峰」という言葉を紹介した。この言葉実はお家元に教えていただいた言葉である。だから思いっきり受け売りなのだけれど、でもとても良い言葉だと思うので紹介することにした。とある中国のお坊さんが、とある高僧に「いかなるやこれ奇特のこと=この世の中で素晴らしいものは何ですか?」と尋ねたところ、その高僧が答えたのがこの言葉だということである。「独座大雄峰=ここにこうして私が座っていることが最も大切なことですよ」という言葉は、つまりは今この瞬間を大切にしなさいとか、今こうしていられることに感謝しようとかの意味であろう。大震災の時に皆が感じた感覚である。のど元過ぎれば・・・の感覚は皆にある。でも健康で平和に過ごしていることの素晴らしさというのは、たまに見直して認識してみるとよいことであると思うのだ。

茶道というのは、茶を点てて飲むという単純なものである。その単純なものに流派があって、その流派の運営のために組織があって・・・これはいったい何のためにと思ったりもしてしまうわけだけれど、でも長い歴史とともに受け継がれているものっていうのはたいていの場合は何らかの組織によってきちんと運営されているものが多いのであるから、仏教でもキリスト教でも茶道でも華道でも、例えばそれが柔道やらのスポーツだって、はたまた建築学会のごとき職業組織であっても、人が行う行為の受け伝えのためには必要なものなのかもしれないなどとも思えるのである。18時過ぎ帰宅。

2018/02/09

午前中は東京都小金井市にて設計中のOさんの家の打ち合わせ。12時ごろまで。

19時、東京都板北区にて新築住宅を検討中のMさんご夫妻打ち合わせ。建売住宅のようなプランしか提案してくれないというこれまでの設計事務所が嫌だということでますいいにご相談に来られたということで、主に奥様がご希望している小さいけれど広がりのある20坪程度の光の箱のような建築をご提案させていただくことにした。住宅の基本設計をしているとどうしてもn-LDKの間取りの呪縛から逃れられないような感覚を捨てきれないもので、僕だって自然と考えるプランはそういう風になる場合が多い。でも、ふとした時にその普通のプランに疑問を感じる場合もあって、そういう時はあえてプランを造るのではなくって大きな空間をデザインするような意識にギアを変えるようにしている。

埼玉県伊奈町に造った伊奈の家では、ワンボックスの大きな箱に光を取り入れるための吹き抜けを設け、その上には棟屋を設けて光をふんだんに取り入れている。1階には土間を配置して、小上がりのリビングを中心に設けた。2階は子供スペースのように自由に利用することができるスペースを設け、細かい間仕切壁は夫婦の寝室以外に設けてはいない。大空間を自由に利用しながら暮らすための箱、いわゆるn-LDKの概念からは離れている住宅だ。どのような住宅を造りたいかのヒアリングはとても大切だと思う。そしてなるべくそのご希望に適した住宅を考えてあげたいと思うのである。

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2018/02/08

午前中は、埼玉県川口市に造ったアトリエKさんの打ち合わせ。数年前に造ったアトリエ兼住宅にカフェを運営するためのキッチンやシンクを設置したり、予算の関係で後回しになってしまっていた扉をつけたりガラスをはめ込んだりの小さな工事である。僕の息子も通っていた英会話で絵画を教えてくれるというとてもユニークなアトリエで、とても人気があるのでどんどん生徒さんが集まっているようだ。遠くから車で送り迎えして通っているお子さんも多いらしい。小さなころから絵画を習うなんて、なんだかとてもロマンチックな気がする。僕の幼少期にはなかった発想だけど、そういう経験をしている子供たちがちょっとうらやましい。

13時、埼玉県川口市にて計画しているYさんの家のリフォーム現場にて、荷物のお片付け作業のお手伝い。Yさんは僕の茶道の先輩で、そのYさんの義理のご両親が暮らしていた古い住宅を片づけて、お嬢さんご夫妻の新居にしようという計画である。すべてを壊してのリフォームではないので、一部の部屋はほとんど手を付けない。そういう場所を探して、洋服箪笥やらの大きな荷物を移動し、養生でぐるぐる巻きにして保護するという作業をお手伝いしてあげた次第である。15時ごろ終了。

2018/02/06

午前中、さと-トーヨー住器の岩崎さんとリクシルの今福さん来社。リクシルというのはサッシのトステムやタイル、住設のイナックス、キッチンのサンウェーブなどが合併してできた大住宅建材メーカーで、テレビでもじゃんじゃんとCMを出しているので知らない人はいないと思うけれど、こういう日本の建材を購入するには、メーカーから直接購入ができるわけではなくて、間に商社を挟まないと買うことができない仕組みとなっている。どのような商社があるかというと、もともとはトステムのサッシを販売していたサッシ系の商社案さんもあれば、もともとはイナックスの設備器具を中心に販売していた設備器具系の商社さんもあって、それが一つのリクシルというメーカーの商品を競って販売しているという状況である。どちらで購入してもカタログの品番のある商品なので品質などの差は出にくいわけで、ということはどちらで購入するほうは安く買えるのかを調査し、少しでも安価に購入できる価格でクライアントにご提案するというわけだ。今日は新しい商品の説明というよりは、リクシルのサッシ建材をよく知るためのツアーの紹介をしてくれた次第であった。

夕方リビングデザインセンターオゾンにて堀和子氏によるセミナーに参加。毎年2回、パリで開催されるメゾン・エ・オブジェ & パリ・デコ・オフ 2018の取材報告で、テキスタイルを中心とした今年のトレンドを紹介するという形式で進められた。僕の家づくり活動は、柿渋や漆喰、無垢の木をそのまま使用するという、いわゆる自然素材を大切にしたものなので、いわゆる今年のトレンドは・・・の世界観とは違うのだけれど、でもそれはそれこれはこれで、こういうことは知っていて困ることはないのである。

2018/02/05

以前作ったアスタリスクカフェのオーナーである平山さんから、なんだかうれしくなるメールが送られてきた。

増井さま

ご無沙汰しております。
お元気でご活躍の様子、日記などで拝見しております。

さて、本日発売の「素敵に暮らす大人のインテリア」(宝島社)というムック本に
4ページほど掲載されております。
昨年出た「大人のおしゃれ手帖」からの転載ということですが、
ますいいさんのお名前とHPアドレスも掲載されていますので、
事後報告ではありますがお知らせいたしました。
リビングデザインセンターOZONEに聞く「人生後半の住まい」のつくり方という記事も載っていますが、
増井さんともお付き合いのある方でしょうか......

昨年直していただいた北側の引き戸はおかげさまでスムーズに動いています。
あのときの職人さんがその後2度ほどコーヒーを飲みに来てくださいました。
ありがたいです。

では、本当に寒い日が続きますが、ご自愛くださいませ。
今後ともよろしくお願い申し上げます。

アスタリスク 平山


こういう便りをたまにいただけることは、家づくりをしていて本当に良かったなと思う瞬間だ。

平山様

色々な雑誌で紹介されるお二人のスタイルは本当にすごいですね。
建築をしてだいぶたちますが、それでもアスタリスクカフェの建築は
僕たちの活動における羅針盤のような存在です。
色々な制度などが次々に出来上がり、ともすると性能重視だったりに方向性がぶれて
しまいがちですが、自分らしい暮らしを実現する箱としての住宅の大切さを大切にしながら
家づくりに励んでいきたいと思います。

オゾンさんの記事は多分知っている方のものだと思います。

ではでは、
お体にご留意の上、美味しいコーヒーを作り続けてくださいね。
増井より

こちらが僕からのお返事である。
お二人が末永くカフェの活動を楽しんでいただけることを祈るばかりである。

2018/02/04

午前中、埼玉県和光市に設計中のKさんの家の打ち合わせ。中庭型のプランを考えてほしいのご要望に対して、敷地の南東の角に塀で囲まれた庭を配置するプランをご提案させていただいた。中庭型のプランというのは敷地にそれなりに余裕がないとなかなかできないものであるけれど、コーナーに外部と塀で区切られた庭を配置して、そこに対してL字型に建築を配置するとまるで中庭のごとき様相が生まれる。中庭は南側からの光を十分受けることができるし、そこに面しているリビング空間も明るい庭の恩恵を受けることができるというわけである。住宅設計をしていると、結局は光と風をそのように取り入れるかのコントロールをしていることが多く、それが程よく調整されているときに人は心地よさを感じるのである。明るければ何でもよいというものでもないし、逆に暗ければ陰湿な空間になってしまう。程よい具合、それが大切なのだ。

過去には完全な中庭を造ったこともある。埼玉県さいたま市にあるWさんの家では平屋建ての住宅の中心部分に大きな庭を配置し、その周囲を生活空間が取り囲むというプランを実現した。玄関を入ると目の前に中庭が現れ、右側がLDK、左側が寝室空間、正面向こう側が水回りという単純明快なプラン構成である。水回りの上部だけは一部2階となっている。ここには子供室となる予定の空間がある。なんだか今日は中庭の話になっているけれど、中庭の魅力というのはやはり庭の向こう側にまた建築があること、つまりは庭を通り抜けて視線がつながることにあると思う。中庭というくらいだから当然プライバシーは確保される。他人の目を気にせずに、本当に家族だけが外部と一体になりながら暮らすことができる場、こういう場を手に入れるということが中庭の本質的な定義なのだと思う。

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2018/02/02

朝礼終了後各プロジェクト打ち合わせ。現在工事の準備をしている埼玉県川口市のH邸の工程打ち合わせなど。これまで一緒に設計を進めてきた林君が、現場の管理を行う監督となる。住宅の工事の場合、まず最初に、工事中に利用する電気や水道の整備をして、続いて地盤の改良工事を行い基礎工事に備える。基礎工事は大体3週間ほどの工事期間を要し、これが終了すると土台敷き込みや足場の組み立てへと進んでいく。そしていよいよ上棟すると大工さんの工事が本格的に始まることとなるわけだ。工事の段取りはこのあたりがまず最初の山場となる。でも意外とすぐに屋根やらサッシやらの段階がやってくるので油断は禁物だ。段どり・・・やっぱりこれが一番大事なのである。

宮中で行われる歌会始の儀において皇后陛下が読んだ歌をある人に紹介された。

語るなく 重きを負(お)ひし 君が肩に 早春の日差し 静かにそそぐ

多くを語らず、象徴としてのあるべき姿を追求してきた天皇陛下の姿を現したものだということである。 僕はあんまり国家の象徴としての天皇陛下の存在について深く考えたことが無いのだけれど、僕がやっている裏千家が日本という国の文化の象徴のような存在だとしたら、天皇陛下というのは日本という国の象徴なのであって、それはとてつもなく大変なことであると思うのである。一人の人間が、国家などという定義をすることがとても難しい組織を表現する、そのすべてに注目されながら人生を全うすることの難しさや重大さを、一番近くにいる人が詠んだ歌だからこそ、なんとなく心にしみわたるものを感じるのだろう。たとえばアメリカの場合、自由の女神像が国家の象徴であるように思える。自由が思想の基本にあり、それに基づいてすべての規定が定められ運営されている。日本はそういう思想体系でいえば、戦後アメリカナイズされた自由や平和という同様の状態であるような気もする。でも日本には自由の女神はない。それをいまさら作ったところでやっぱり違和感がある。思いやり、勤勉さ・・・日本を象徴する思想の体系はわかりやすく表現するといったい何なのであろう。一言で表すものがない状態、それが今の日本なのかもしれない。

それにしてもこんなにも大変な場面で安らぎの象徴として注ぐものが日差しであることにも注目したい。僕たちが設計している住宅はいつもこの日差しをどのように取り入れるかを考えている。やっぱり日差しって大切なんだなあ、改めて思うのである。

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