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増井真也日記

2017年12月アーカイブ

2017/12/28

今日は恒例の本納寺お餅つきに参加。一緒に参加した田部井君と林君は、生まれて初めてのお餅つきということで初めのうちはこわごわとした様子でソーっと杵を振り下ろしていた。周りで見ている人たちもこれで大丈夫かの不安を隠しきれない様子だったのだけれど、誰でも初めての時はそんなもので、そして誰でも何度もやればなれるものである。全部で十数回の回を重ねるころには、まるで餅つき職人さんのごとく餅をついていた。

こういう行事はだんだん少なくなっている。僕の妻の実家でも毎年お餅つきをしていたのだけれど、いつの間にかやらなくなってしまった。お寺という場所は、檀家さんが集まり、そのお寺を維持する関係者が集まり、そして住職さんが祈りをささげる神聖な場所である。人が集まり、心をきれいにして祈る場所だからこそ、こういう行事がふさわしい場所であるように感じるのだ。ここに集う人々の心はいつもとてもすがすがしい様相である。毎年餅をつくたびに思う自分の体の非力さ、来年はもう少し鍛えておくことにしよう。

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会社は今日で仕事納めだ。いろいろと途中の現場もあるけれど、また来年心機一転頑張ろう。お世話になった皆様、一年間ありがとうございました。そしてまた来年もどうぞよろしくお願いいたします。

2017/12/26

ホテルの朝、やたらと早く目覚める。こういうなれないところで迎える朝はいつもそうだ。1階に降りて、朝食のバイキングをいただく。あまり食欲もないので軽めにしておいた。

9時ごろ、裏千家の今日庵へ移動。この場所は堀川通を二条城のほうに進み、少し曲がったところにある。いわゆる観光地ではないのでとても静かな朝景色だ。一つの通りに、表千家の不審庵と裏千家の今日庵が並ぶように建っている。この通りの下にはきれいな水が流れているらしく、井戸からくみ上げた水を茶で利用するためにこの場所を選んだそうだ。

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用事を伝えると、改修工事が終わり出来上がったばかりの茶室に通される。これはとてもありがたいこと、再利用された古材の構造材、そこに塗られた左官の壁だけが妙に新しい。照明は暗く落とされているので、雰囲気はとても厳かである。やはり茶室はこうありたい。まるで事務所のように蛍光灯がついているような明るい茶室は、茶室とは呼べないのである。

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終了後すぐに事務所に戻る。14時、帰事務所。

2017/12/25

朝礼終了後各プロジェクト打ち合わせ。

17時より、埼玉県川口市にて設計中のHさんの家の打ち合わせ。今日は見積もり訂正作業のご説明。最後の最後までキッチンの作り方で迷っていたのだけれど、今回のキッチンはグラフテクトさんのものを利用することにした。

グラフテクトというのはキッチンハウスの廉価版で、8個のパターンの中からセレクトする形式をとっている。フルオーダーではなく、ある程度の装備をある程度のパターンに限ることで、通常だと200万円近いキッチンハウスのキッチンを75万円と85万円のどちらかの金額で購入することができるというメーカーである。つい先日のオゾンさんでの会合でお知り合いとなり、使用してみることに。

表面の仕上げ素材はメラミンを使用している。このメラミン、ずいぶんと素材の進化を遂げたようで、傷や熱にもとても強いとのこと。素材感は自然素材のようにはいかないけれど、シンプルな白系の色を選択すれば問題はない。なかなかおすすめなキッチンなのである。

終了後、一路京都へ。お家元への用事で急遽お邪魔することになった。年末の押し迫った京都は少しは静かなのかと思いきや、いつもと変わらず外国人観光客の大軍が大きな声で話している。観光立国の聖地のような場所だから仕方がないけれど、でもあまりにガサツな行動をとるような人たちの大軍に合うと少々興ざめの感となってしまう。夜も更けているのでそのままホテルに直行とした。

京都までの夜の新幹線、やっぱり楽しみは読書である。今日は原田マハさんの「生きる僕ら」。いじめられて引きこもりになった青年が、一人で育ててくれてきた母親にも出ていかれ、一人で亡くなったお父さんの田舎に行くと、そこで出会う人々とのふれあいや、田んぼでコメを作るという行為の中で、生きる力を身に着けていくというストーリーである。ハラハラするような物語性があるわけでもなく、ただただ人の心情を描いている。つまりはサザエさんのような読み物なのだけれど、でも僕はそういう原田さんの世界観がとても好きだ。人が生きる意味とは?そういうことをたまには考えないと生きていけない人種がいる。僕は少なくともそういう人種で、何かの行為をして、何かを思い、それが誰かに何らかの思いを喚起する、そういう意味のようなものとともに生きていきたいと思うのである。原田さんの文章を読んでいると、その生きる意味の本来の姿を思い出させてくれる。お金のためでもなく、立身出世のためでもなく、そういうものではない本来あるべき姿をそれぞれの読み手に思い起こさせる、そんな力を感じるのだ。

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2017/12/22

10時より東京都台東区にて設計中のSさんの家の打ち合わせ。Sさんの家はとても小さな敷地に建つとても小さな家で、予算は1500万円というとても厳しいプロジェクトである。近年の好景気にこのようなローコスト狭小住宅を手掛ける建築家は稀有かもしれないけれど、それでもますいいはこれこそがまさに得意の分野ということで挑んでしまうのである。

クライアントは塗装の仕事をしていたという女性と、そのご主人だ。塗装の仕事をしていた・・・、これはよだれが出るほど恵まれた条件である。セルフビルドをやるにはある程度の作業量を任せることができる職人さんの人工を見積もりで見込んでおくのだけれど、そもそもクライアントが職人さんであればそんな必要な全くないわけで、ということは本当に材料代だけで漆喰の仕上げをするなどのことが実現するのである。いよいよ見積もりを終え、最終金額調整を経て確認申請へと進む段階、この先が楽しみなところだ。

14時、埼玉県川口市にてリフォームの設計をしているYさん打ち合わせ。この現場は住友林業の古い住宅を全面的にリフォームし、いわゆる住友林業の住宅にある和風のイメージから、フランスのちょっとレトロな住宅を思わせるようなイメージのフランス語教室兼住宅に改修しようというものである。こちらも年明けの契約・着工に向けての準備を着々と進めているところ。この先も順調に進めていきたいと思う。

2017/12/20

朝10時、エッグタイルのPRのために齊藤さんが来社してくれた。エッグタイルというのは、卵の殻から作られているタイルで、なんでもキューピーマヨネーズの原料となる卵の殻を利用して作っているらしい。このタイル、実は偶然にも以前、僕の自宅の子供室で利用したことがある。その時は多孔質なタイルに絵の具をしみこませて着色し、子供たちに自由に貼らせた。この時点ではまだ、まさかこの材料が本来なら捨てられてしまうはずの卵の殻から作られているということは知らなかったのだけれど、僕はその話にとても感銘を受けた。

僕が好きな洋服メーカーにパタゴニアがある。パタゴニアは古い羽布団や枕に詰められた羽毛の回収、洗浄、処理を行う企業から、使用済みのダウンを調達しているそうだ。このプロセスは時間がかかる割に、調達できる量が少ないということで、その結果販売価格も割高となる。でも、資源の枯渇が問題視される中で、このように捨てられてしまうであろうモノを再利用するという考え方は、僕たちの子供の世代にも僕たちと変わらないような豊かな暮らしをさせてあげるためにはとても大切なことだと思うのである。

で、建材の話に戻る。建材もしかり、僕たちは限りある資源を大切に使わなければならない。山を切り崩してセメントを取る、石を掘る、・・・そういう不可逆的な原材料の仕入れ方をなるべく少なくし、少しでも持続可能な社会の状態を作ることに役立つ、そんな素晴らしいタイルに出会えたことに感謝したい。

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2017/12/19

朝礼終了後、各プロジェクト打ち合わせ。

10時、埼玉県川口市にてリフォームを設計中のTさんの家の打ち合わせ。今日は実施設計の申し込みをいただいてから初めての打ち合わせである。ご予算が700万円ほどということで、なるべく壊す部分を少なくしながら、水回りなどをすべて新設するというご提案をさせていただいた。

13時過ぎ、茶道稽古。今日は棚の薄茶出前である。普段の仕事が忙しい中でゆったりと稽古をすることが難しいのだけれど、でも月に3回2時間ほどのお稽古の時間を確保するくらいの心の余裕は持ちたいもので、何とか月に2回くらいは参加できるというような現状である。茶の湯は昔、戦国武将のたしなみであった。暇な時間を持て余している人の娯楽ではなく、むしろ生きるか死ぬかの極限状態にいる人の人生の一場面であった。政略の場になることもあり、精神統一の場になることもあり、・・・まあ僕の忙しさなどはそれに比べれば米粒ほどにしかならないのは確かなのである。

夕方、見積もり作成状況の確認作業など。

2017/12/16

10時、埼玉県和光市にて新築住宅を検討中のKさんご夫妻打ち合わせ。現在所有している中古の住宅を建て替えて、新しくしたいという計画である。住宅は築20年ほどの中古住宅である。建売用に造られたものを中古で購入したそうで、南西の角地という好立地にもかかわらず、どうにも住み心地が悪そうな建築である。

南西の角地の西側が長方形の長辺となっている土地である。その長辺には多くの窓が設けられていて、結果的には西日がとてもよく入る建物となっている。西日はとても強い光なので通常の設計だとなるべく取り込まないようにするのだけれど、きっと建売の設計士さんが深く考えることなく窓を設置してしまったのであろう。夕方に強烈な西日の入る家、それではなかなか快適に住めるものではないのである。結果的には建て替えのご希望が強そうである。年明けのご連絡をお待ちして、プランのご提案をさせていただきたいと思っている。

13時、東京都杉並区にて新築住宅を検討中のIさんご夫妻打ち合わせ。今日は第2回目のプレゼンテーションである。前回のL字型のプランに続き、長方形のシンプルなプランをご提案させていただいた。どちらのプランも外部からの視線を遮ることができる中庭のようなウッドデッキが配置されている。住宅密集地に建つ都市型住宅の場合は、開口部を設けることにより光と風を取り込みつつ、プライバシーを確保することで落ち着きのある居心地の創造を両立するという、二つの快適さを作り出すことがテーマとなる。今後の設計でも引き続き追及していきたいポイントである。

17時、新宿パークタワーにてオゾンさんのコンペに参加。東京都墨田区にて検討中のマンションの改修工事計画についてのプレゼンテーションを行った。プランの説明、模型による説明、そして見積もりの解説と、一連のプレゼンテーションを1時間で行うという忙しさである。最後にご質問にお答えして、18時ごろ終了した。

2006年に屋久島である一軒の住宅を設計した。当時は東京都の世田谷区で暮らしていた初老のご夫婦が二人で移住するための住宅として造ったものである。60歳くらいだろうか。今の僕にとっては、この年齢を初老と呼ぶのは早いような気がするけれど、当時まだ32歳だった僕にとってはそんな感覚だったのだ。

敷地は海から数百メートルくらい離れた高台の土地である。LDKに寝室が二つ、納戸と通り土間のある30坪くらいの建築だ。北側を見上げるとモッチョム岳という山が見える。その山をイメージして大きな屋根をデザインした。主な材料は杉である。屋久島では小杉と呼ばれる小口径の杉しか採ることができないので、鹿児島の杉も利用している。LDKや通り土間の様子は写真のようである。

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現場は屋久島の大工さんに依頼した。久保田さんという大工さんで、手刻みをこよなく愛する職人さんだった。プレカット全盛期に機械に頼らず手刻みしかやらない姿勢がとてもかっこよかった。だから梁も角材ではなく、たいこ梁を使ったりの自由があった。島に打ち合わせに行くと、大工さんが鹿の鍋を作ってくれて、三岳をストレートであおりながらつぶれるまで飲んだ。そしてそのまま、大工さんの家で家族と一緒に川の字で寝た。

家づくりではこんな物語が現場ごとに生まれる。現場に泊まることはないけれど、でも現場で遅くまで作業を行うことはある。今でもますいいのスタッフはよく夜遅くまで現場にいる。さてさて、今日打ち合わせを行った3名のクライアントとは、いったいどんな物語が始まるのだろうか。僕が作ることのできる住宅など、人生をすべてかけてもきっと400件ほどであろう。今はちょうど1/3を超えたあたりであろうか。ハウスメーカーなどと比べれば比較にならない小さな数字だけれど、でもそれだけ濃密な物語が生まれるのだとも思う。今後を楽しみに進めていきたいと思う。

2017/12/14

朝8時、少々早めに出社して橋本君と打ち合わせ。

10時、東京都小金井市にて新築住宅を設計中のOさんご家族打ち合わせ。Oさんの家は20坪ほどの狭小住宅である。今回は基本設計の終盤の打ち合わせということで、プランの方向性もまとまりつつある状態である。いよいよ実施設計へと移行するのだけれど、実施設計とはいかなるものか、少々お話したい。

実施設計では、まず図面の縮尺を大きくする。ますいいでは通常1/50の平面図を作成し、それに引き続いて矩計図、立面図、展開図、設備図と進めていく。数回の打ち合わせを経て、1/50~30という大きな模型も作る。基本設計時点で作成している模型が1/100だから、それに比べると倍から3倍ほどの大きさとなる。下の模型は数年前に造った賃貸住宅併用のRC住宅である。模型では各部屋の状況がわかりやすいように壁を取り外せるように作成してる。ちょうどアリの巣の模型のような状態であろうか。

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こちらは建築が完成した後の様子だ。さすがに建築の外壁を模型のように取り外すことはできないけれど、先の模型を30倍すると現実となる、その様子はご理解いただけよう。この段階では構造の検討も行う。木造ならば柱や梁の寸法を決めたり、鉄筋コンクリート造ならば壁式の壁量や寸法決め、位置調整なども行う。階高の調整や開口部の検討なども行っていくし、法規制との適合性も確認調整していくことになる。最終段階では見積書を作成するための積算を行い、確認申請を提出するための準備なども行う。つまりは建築を作るための実際的で詳細な準備は、すべてこの段階で行うというわけなのだ。

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2017/12/13

AIなどの技術革新が報じられる中で、いったいどんな仕事ならロボットにとってかわられる心配がないのかと考えてみた。例えばコンビニエンスストアなどは、完全無人営業のお店がすでに存在しているし、数年後にはきっと日本でもこの無人コンビニが普通の光景になるのだと思う。コンビニで働いている多くの人は突然仕事を失うことは目に見えている。確かに人手不足解消にはつながるけれど、人口も減少する国で本来は売り上げも仕事を減らしてよいはずなのだから、少ない人で働ける分の仕事をすればよいという考えもある。現に、大手のファミレスなどでは深夜営業を控える動きが出ているし、コンビニでも24時間営業を見直す動きも出ている。縮小経済をうまくコントロールしていけば、AIなど進化させずとも、十分社会は回るはずなのになぜ人は進化という動きをやめることができないのかと思うのである。進化は諸刃の剣だ。核兵器と原発の関係、つまりは平和利用のコントロールが効いていれば進化は確実に人類に貢献するはずだけれど、その制御が何らかの形で外れたとき、それは人類を滅ぼす原因にもなる。先のコンビニの例でも、必要以上に人手不足の解消をしすぎて、結果的には失業率を上げてしまうようなことに陥るような気がしてならないのである。

自分自身について考えてみる。

僕たちがやっている設計という作業は?
僕たちがやっている現場の管理という作業は?
こういう仕事も機械的に進めるだけならほとんど人の手が必要なくなるのは明確だ。でもあくまで機械的に進めるだけなら、である。

日本の住宅着工数はどんどん減っていく。新築住宅などはもうあまり必要なくなってしまうのだ。それでも少しは作られる。大方の予想では今の半分くらいになるといわれているけれど、でも半分は作られるのである。大手ハウスメーカーはのっぽの住宅を作って収益を上げる家!!などとうそぶいている。空き家が社会問題になっているのに、である。賢い人たちは騙されないだろう。でもそれでも家は作られるのだ。そんなにしてまで作る必要があるとすればそれはなぜかと考えてみよう。

家は人が暮らす箱である。暮らすという行為は、その人が自分らしく快適に心も充実して過ごすことを言う。決して生きているという最低条件を満たせばよいというわけではない。心の充実、つまり満足している状態を手に入れることが大切なのであり、それを手に入れるために必要だからわざわざ家を作るのである。

心の満足を手に入れる。これは簡単そうで難しい。すべての人を満足させることができる人など存在しないだろうとも思う。心の満足は、その人がこだわり、心地よいと感じるものに囲まれた状態を作ることである。例えば僕の場合、光や風、自然の素材、人の手の跡が感じられるような左官の仕上げ、そういうものにつつまれている状態が好きだから、どんなに豪華なホテルでも安物のクロスやビニルシートでリフォームの工事がされたばかりの白々しい状態などは逆に居心地が悪く感じてしまう。

話を戻そう。ロボットに変わられてしまう仕事とそうでないモノとの差は、その仕事があるルールによって分析・分類でき、機械的な作業によって構築され得るかどうかにかかっているような気がする。そしてもう一つの要因は、その機械的な作業によって作られたり行われたりすることで、その恩恵を受ける人が満足できるかどうかが重要な要因であると思う。そこで設計の仕事とは?
さてさてどうであろうか。

ロボットが描いた絵を見て感動するのだろうか?
ロボットに恋をするのだろうか?
こういう恐ろしく人間らしい感情的な行為が、もしもロボットも人間も同等に行われる時が来たら、その時は本当に人間の出番がなくなってしまうかもしれない。設計とはそれほど人間らしい行為だと思う。少なくともこんな時代に家を建てる人にとっての設計という行為は、それほど人間らしくなければ意味がないのである。ロボットに恋をする?今のところそこまでの心配はないだろうと、僕は勝手に思っている。

2017/12/11

朝礼終了後各プロジェクト打ち合わせ。東京都板橋区にて設計中のSさんの家のプランニングなどについてスタディーするも、なかなかの難問である。

17時、埼玉県川口市にて設計中のHさんの家の打ち合わせ。今日は3階建て案から2階建て案に変更しての見積もり提示である。同じ敷地に同じくらいの面積を持つ建築を3階建てと2階建てで計画するとそれくらいコストが変わるか。こういう比較はあんまりしたことが無いけれど今回は両方の建物を設計し、積算してみることでその差が明確になった。もちろんすべての条件をそろえたわけではないので、研究者のそれのようには正確ではないが、感覚的な数値としては十分に今後の役に立つものとなると思っている。その差額、単純には言えないが、床面積が同じであれば差額は10%弱であろうかと思う。2000万円の建築なら200万円弱となるわけでこのコストが仕上げや設備に振り分けられるとなれば、2階建てのほうが格段に仕様が上がることになる。今日の打ち合わせで大方の方針は決定した。あとは実施設計を仕上げるのみ、工事に向けて進めていきたいと思う。

夜、川端康成「雪国」読了。なぜか突然読んでみたくなった。前にも読んだような気がするけれど、まったく記憶にない。そんな本は僕の本棚にはいくつもあって、それはたいてい名作と呼ばれるようなちょっと小難しい本だ。何かの思いで買ったはいいけれど途中まで読んで終わってしまったり、全く手を付けなかったりする本たちである。雪国はたぶん湯沢温泉にスキーに行った後に買ったような気がする。川端康成が泊まったとかいう温泉宿に泊まり、良い気分になって購入したのであろう。その時は深く感じることができなかったようだけれど、なぜか今回は食い入るように読み進めることができた。新潟には何度か行ったことがある。雪の季節はスキーに行くだけ、そのほかは雪がない季節である。トンネルを抜けたときの雪の量は納戸経験しても驚く。世の中にはこんなにも雪が降るのかという思いと、こんな雪の中でよく暮らしていけるなという思いである。読み終えた後の印象には、雪、温泉、火、天の川、男女のはかない恋愛、山、貧しい中の気丈さ、・・・そんな印象が残る。そしてそれらは失われつつある日本の情景のような気がする。今回読み進めることができたのはきっとそんな情景に対する思いが強い年齢に自分自身がなったからであろう。つまりは年を取ったのだ。新潟といえばスタッフの渡邊君である。今度一緒に新潟について語り合ってみようと思う。

2017/12/10

11時、川口駅に集合して埼玉県の嵐山にある国立女性教育会館にて茶会に参加。男女共同参画の推進機関であるというこの施設がどのような経緯で作られたのかはわからないけれど、広大な土地にあるなかなか立派な建築群である。裏千家の青年部が茶会を行っているというので駆け付けた次第である。

茶会というと、問題なのが正客である。僕は埼玉県青年部の部長を努めているから、こういう時に何かと正客にされやすい。たとえ年上の先生方がいようとも、なぜか正客を進められてしまうわけで、そして断り切れない場合には結果的にやらざるを得ない状況となる。若輩者ですが今日一日よろしくお願いいたします...。からスタートし、席主とご挨拶を行うと、ここからは正客しか話をすることはできないわけで、ほかのお客は正客の会話を楽しむしかないのであるから、それなりに責任重大だ。お菓子、床の説明と進むころには薄茶が点つ。一人目としていただくのはなんとなく緊張するもので、粗相のないようにしっかりといただく・・・。経験の浅い僕などが正客を務めるなど本当に申し訳ないのだけれど、でもこれもお役目である。いつまでも経験がないとは言ってもいられないので、楽しんでいけたらよいと思うのである。

終了後、越生まで移動して再び山猫軒を訪れた。今日は10人展が展示されている。ちょうどジャズコンサートが始まるところで、幸運にもジャズを聴きながらランチをすることができた。17時ごろ帰宅。

茶道における禅語に日日是好日というものがある。まあ読んで字のごとく、毎日が良い日だというような意味であろう。僕はこの言葉が一番好きだ。人生にはどうしても通らなければいけない辛い時もあろう。でもどんな一日であったとしても、大切な一日、意味のある一日、だから常に前向きで歩んでいこうというような理解をしている。この言葉、森下典子さんのエッセイのタイトルともなっている。このエッセイは大森立嗣監督によって、まさに「日々是好日」というタイトルで来年映画が公開される。大森監督といえば2005年に花村萬月の芥川賞受賞作を原作に『ゲルマニウムの夜』で初監督を務め、東京国立博物館の敷地内に特設映画館「一角座」にて上映をしていた。僕はこの作家が好きだったので、すぐに見に行ったことを覚えている。とても懐かしい響きのする人たちによって、とても好きな言葉が映画になる。ぜひ見てみたいと思っている。

2017/12/09

今日は午前中に予定されていた打ち合わせがキャンセルになったのでぽっかりと時間が空いてしまった。夕方に椿山荘へ行く用事があったので、その前に国立新美術館で行われている安藤忠雄展に足を運んだ。会場には光の教会の実物モデルが展示されている。土曜日ということもあってとてもたくさんの人が訪れていたけれど、僕は今の時代にこんなにも建築に興味がある人がいたのかという驚きとともに来ている人たちを見ていた。僕と同じくらいの40代の建築関係者、若いカップル、もっと年上の方々、安藤忠雄という人はそれほどまでに大生の世代に受け入れられているということなのであろう。ヒーローと呼ばれるような人がいなくなった時代における数少ないヒーローなのかもしれない。

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僕の事務所には若い建築家を目指す学生が集まってくる。入社して3年ほどは見習いの期間である。誰かの下でいろいろな作業を行い仕事を覚える。ますいいリビングカンパニーは工務店機能を兼ね備えた設計事務所だから、いろいろな仕事の中には設計事務所らしい模型作りのような作業や、工務店の現場監督らしい材料拾い・発注などの作業もある。そういう様々な仕事を経験して、早いと4年目くらいから設計に携われるようになるのである。

ますいいは住宅を得意とする組織である。皆住宅が好きで入ってくる。設計事務所の中には有名になるまでの間の食いつなぎとして住宅に取り組む人が多いが、ますいいでは今もそしてこれからも住宅がメインである。住宅には人が暮らすという機能がある。人が快適に暮らすための箱、基本的にはこれをいかに作るかの勝負である。快適とはなにか?それを実現するために求められる性能とは?この辺の問答はまるで禅問答のごときに常に揺れ動く。政府の決める性能値は、CO2対策や景気対策によってころころと変わる。火事が起きたり、アレルギーが問題になったり、二酸化炭素の国際会議が行われたり、とにかく何かがあるとハウスメーカーの家造りが推奨されるかのごとき制度ができる。でもそのたびに禅問答である。そもそもそれらの制度ができるたびに思うのであるが、とにかく嘘っぽいのである。

建築家とは、未来を見据えて真理を読み解く能力が求められると思う。そのためには様々なことに触れる必要がある。様々間価値観に触れ、自分の価値観を作る。その先に初めて建築家としての私見が生まれると思う。安藤忠雄先生の展示に触れ、いろいろなことを考える機会となった。先人の素晴らしい仕事を見て、自分たちの仕事に生かしていきたいと強く思うのである。

2017/12/07

朝一番で、東京都豊島区にある本納寺さんへ。今日は本堂の改修計画に向けた打ち合わせである。築90年ほどのお寺の本堂、壁が剥がれ落ちたりの傷んでいるところがあちらこちらに見受けられる。屋根の瓦もだいぶ傷んでいて、人が歩くとその重みで割れてしまうほどである。この改修工事では、屋根の瓦を一度下して、下地を補修し、その上に少々重さの軽くなる改良本瓦を吹くという計画を考えている。あくまでまだまだ計画中の段階であるのだが、小さなお寺の工事計画というのは住宅に通じるものがあるので面白い。来年からは準備委員会が立ち上がる予定とのこと。僕もその一人にならせていただけるようなのでぜひ頑張って取り組みたいと思う。

14時、川口市役所にて青木公園の外柵設計についての打ち合わせ。大体の図面が出来上がったところでの確認をしていただく。川口市の中心部に位置する公園の外柵である。総延長は約1キロ、市民が成長とともに記憶する、つまりは町のアイデンティティーのごとき柵になればよいと願っている。完成は来年であるが、とても楽しみなところだ。

2017/12/05

朝礼終了後、各プロジェクト打ち合わせ。

10時より、東京都台東区にて新築住宅を設計中のSさんの家の打ち合わせ。見積もり前の最終打ち合わせということで、建物の形を大方決定するべく打ち合わせを進めた。12時ごろ終了。

夕方、大工さんの中村さん来社。埼玉県のさいたま市にて進めてきた木造住宅が終了したところで、報告に来てくれた。最後まで丁寧に現場を進めてくれて感謝である。やはり家づくりの中心にいるのは大工だ。今の家づくりはプレカットが中心で、構造材の加工技術を披露することは少なくなった。機会があれば古民家のごときダイナミックな木組みを表現するような建築も作ってみたいと思う。

2017/12/03

京都3日目。今日は午前中ですべての用事が終わり、帰路に就いた。

帰りに新幹線の中で駅弁を食べた。滋賀県で作られている井筒屋さんの牛丼弁当である。確か1000円だったような気がするけれど、駅弁というのはどうしてこんなにも高いのだろうかの疑問を感じつつも、でも駅弁しか食べるものがないので仕方なく食すことにした。時刻は13時過ぎである。この車両で食事をしているのはどうやら僕だけのようだ。ふたを開けると、近江牛の牛丼である。なかなかの美味、冷めていてもおいしいようにしっかりと味がついている。ちょうどよい量の昼食を取り読書の時間に入った。

ちょうど東京駅に着くころに加藤廣「利休の闇」読了。利休がなぜ切腹をするに至ったのかを、通常とは異なる視点で描いている歴史解説のような小説である。見る角度が変われば解釈も変わる、そんなことを考えさせられる本であった。僕はたまに京都に行く。京都に行くといろいろな人に会い、いろいろなものを見る。そしていろいろなことを考えもする。京都は確実に日本の文化の中心であると思う。そして本物がある、本物がいる場所であるような気もするのである。

最近は本物がいなくなったとは、京都でとある人から聞いた言葉である。一つのことに没頭して、その道を極める人とでも言うのだろうか、本物の大工、本物の政治家、本物の俳優・・・そういう人がいなくなって上っ面をなでるような人が増えたとその人は言った。京都の人が言うのである。これは由々しき問題であろう。僕は住宅を作る本物だろうか。僕の会社は・・・。坪700万円の豪邸を作る数寄屋大工ではないが、でも僕に任せてくれる普通の人たちの、決して奇をてらうことのない普通の家を作る本物でありたいと思う。そんことを強く決意し、また明日からの仕事に取り組みたいと思う。一人旅、初めはかったるいけれど、でも確実に得ることがある、行ってよかったの旅なのである。

2017/12/02

昨日から京都に来ている。裏千家淡交会の代表者会議なる会議に参加するためである。京都はちょうど紅葉の見ごろで、観光客もたくさんいるようだ。海外からも多くの人々が訪れているようで、町のあちらこちらに大きなバッグを持った外国人観光客の姿が見える。

昨日は裏千家今日庵に行った後、知人とグリルフレンチなるレストランで食事をした。オーナーシェフとその息子さん、そして二人ほどの男性が厨房の中にいるこじんまりとしたお店である。カウンターで食事をするのがオーソドックスなスタイルのようで、コース料理もあるのであろうが、皆好き好きに自分たちの食べたいものを注文しているようだ。僕はお勧めのワインをいただきながら、サラダや揚げ物、ステーキなどを注文した。どれもとてもおいしく、それでいて気取りすぎない家庭的な穏やかさもある、とてもくつろぎやすいお店であった。

カウンターはブビンガの厚板を使用していた。このお店の内装は中村外二工務店の作だそうだ。今は2代目の中村義明さんが代表を務める知る人ぞしる工務店である。どうりで贅沢に銘木のカウンターが使われているわけだ。中村外二さんというのはすでにお亡くなりになった大工の名工である。富山県の出身で、京都において数々の数寄屋建築を造り上げている大工さんで、吉村順三先生の設計したロックフェラー邸やジョンレノンの茶室などを作ったという経歴がある。坪単価が700万円!!というとてつもない単価を聞いたことがあるけれど、その真偽は定かではない。ただ日本で最も有名な数寄屋の工務店であるということだけは確かであろう。

今日は朝から会議である。会議の中で一期一会のことを聞いた。一期一会、小学生でも知っている禅語であるが、この言葉をそれほど真剣にとらえている人はいないのではないかの話である。人と人が出会う奇跡を改めて考えてみると、その偶然性は奇跡と呼ぶにふさわしいものであろう。その偶然性に感謝しながら、目の前にいる人との時間を大切に何事にも取り組みたい、そんなことを改めて考えさせられた。

そういえば建築家の安藤忠雄さんが、ますいいリビングカンパニーを作ってくれた僕の恩師である石山修武さんの出版記念パーティーに参加された時の言葉を思い出した。安藤さんはとても体調がすぐれないご様子であった。でも石山に呼ばれたからな!と大阪から東京に駆け付けて、そしてパーティーの一番初めに一人目の挨拶をした後、そのままじゃあ大阪に帰りますと言って会場を後にしたのである。わざわざ大阪から、この一言を話すために東京までの義理堅さに驚いた。一流になる人はみなこういうことを大切にしているのであろう。ちなみに一期一会のお話は裏千家お家元の言葉である。

会合は明日まで続く。寒い京都、風邪をひかぬように注意しようと思う。

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