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増井真也日記

2017/06/11

家づくりで最も大切なことは、その人のライフスタイルに合った設えを作ってあげることだと思う。自然素材を使った木の空間が好きな人には無垢の床材をふんだんに使った家を作ったり、なるべく人工的な着色を行わなかったりの意匠的な工夫をすることで、とても温かみのある空間が出来上がる。

写真の住宅は数年前に造ったTさんの家。この家のクライアントは、自然素材の色以外はあまり見えてこない、つまり時間とともに変化するような自然の色だけに囲まれて暮らしたいというような考えを持っていた。そういう嗜好に基づいて選定したのは、杉の床材である。杉というのはとても柔らかい素材なので、床に貼ると傷がつきやすいという欠点がある。でも、逆に言うとはだしで歩きたくなるような優しさがある素材といえる。日本の山には杉の木がたくさん生えているから、比較的安く購入することも出来るのである。

キッチンにはモルタルを使用している。モルタルはセメントが固まった状態のことを言うのだけれど、この表面に撥水材を塗装するとキッチンの天板に使用することができる。無垢の木の面材と合わせるととても味わい深い造作となる。

天井や床の支えには、普段梁で使用する米松材を使用した。梁のサイズは105mmか120mmなので、それを半分にスライスするとちょうどよい幅になる。455mm間隔で頭の上を軽やかに流れる垂木や根太は空間にリズムを生み出す。

こういう造形は数値では測れない。断熱等級や耐震等級というような断熱材をたくさん入れたり、筋交いをたくさん入れたりの結果ではない。そんなに簡単に作れるものではないのだ。どうやって作り出すかって・・・、それは一つ一つの家を丁寧に建築家が設計するしかない。夜遅くまで模型や図面と向き合いながら、こんな空間を作りたいという強い思いをもってデザインした結果しかないのである。

僕たちがやっているような家づくりはたくさんはできない。一人が一年に2軒・・・そんなものだろう。ますいいのスタッフはみなが建築家としてその設計をやっている。一年に2軒程度の作品しか作れないからこそ、信頼してくれて任せてくれたクライアントには誠実に答えたいと思うのである。

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