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増井真也日記

2012年7月アーカイブ

2012/07/31

ガラスの多いますいいの事務所は、夏になると冷房を入れても冷えない状況になってしまう。ということで今年はよしずを購入してみることに。金額は2700角二つで6000円ほど。意外なほどのローコストで、思わぬ冷房効果を得ることができた。夏の断熱対策には、ガラス面の外側での遮熱が一番効果的であることは周知の事実であるが、外付けブラインドの類は意外なほどの高価なものが多い。ドイツ建築などのエコロジーに対する考えが進んだ国では、それでもステンレス製の外付けルーバーなどが普及しているらしいが、ますいいで普段建てているローコスト建築の中に、設置するにはコストバランスが悪すぎる。私自身も、余りに高価な代物を建築部品として採用することには余り賛成な方ではないので、このような初源的な手法によりクリアすることをお勧めしたい。

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2012/07/30

今日は「間」という日本独特の時間や空間の捉え方について考えてみた。西洋的な時間と空間に対する絶対認識に対し、日本人はすべてをこの「間」という相対的な認識によって捉える傾向がある。つまりはすべてを間隔のあり方として捉えているのである。100年以上前に時間や空間という概念が日本に持ち込まれ、それに対する日本語の両方にこの「間」という字が使われていることがそれを物語る。「間」を重視する日本人は、その物やその時よりも、間にある空白や静寂を重視する。

この「間」は神の光臨する場の表現としても使われている。私たちが通常家を建てる際に行う地鎮祭を思い出して欲しい。聖域を囲む為4隅に竹が立てられ、これにしめなわを張る。この縄を聖化するために、太陽の光彩を型どったごへいが下げられる。そしてその中央には神主さんが持ってきたさかきの枝をよりしろとして立てるのである。地鎮祭ではこの「間」に一時的に神が降臨し、去る。そしてこの手法こそが日本における空間を限定する最も初源的な手法といえる。つまりはたった4本の柱のみで、加えて言えばそれと縄だけで、聖域を限定するのである。

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ある地鎮祭の様子

建築の内部空間のことを間取りと呼ぶ。つまり「ま」を「とる」のである。4本の柱を隅に立て、西洋建築のように厚い壁ではなく、透けて見えるほどの薄い壁や障子、すだれなどが用いられることで、光線や風、視線を制御するのである。そしてこの間の中で人々が生活することとなる。昔はすべての部屋に畳が敷かれていたから、その畳の枚数がそのまま部屋の名前となった。今でも和室のある家庭では、6畳間とか8畳間という風に部屋の名前をつけているであろう。

このような用いられ家をするとき「間」は人が生きる場を意味することになる。現代社会ではその住まい手の志向や経済状況などによって形態こそ様々ではあるものの、すべての住宅はこの「間」の集合体なのであり、その間を構成する要素が建築と呼ばれる物体であるのだ。

倉庫を意味する「くら」という言葉、じつはもともとくぼんだ地形のことをさす言葉であった。そんなくぼみに穀物を貯蔵したので、倉庫までくらと呼ばれるようになったのだが、同時にくぼみというのは神の降臨する場でもあったので、くらは神の座としてもあった。だから伊勢神宮や出雲大社のような古代の神殿建築は当時の倉庫の建築様式を用いているのである。日本建築は元来可燃性であった。しかしくらだけは、土壁を用い、かわらをのせて、耐火的な建築とした。この構造は通気が悪く居住には適さなかったが、北国ではここに畳を敷いて居室として利用した。このくらの考えは現代住宅に通じるものだろう。現代住宅は住まい手にとっての財産を守る倉庫でもある。耐火構造構造として、機密性を持たせ、換気設備などを設けて通気を確保する。風の通りを考えて窓を配置し、自然の力も利用する。まさに古代の倉庫建築こそが、現代住宅建築の初源ともいえる。

一方「間」の話に戻ると、「間」は本来消滅への予感に満ちている。そもそもカが空白であり、無であるのだ。このことは日本人がさびの感覚を大切にしていることに現れているだろう。私たちは普段から、者が時間の経過と共に帯びた古色や、荒涼たる有様に美意識を感じるものだ。古いお寺のたたずまいに感動する人はいても、新築された豪華絢爛なお寺を見るとたいていの人は宗教法人という制度で肥えたそのお寺に嫌悪感を示すであろう。普段の新築住宅の仕事をしていても、見るからに新しい物は嫌いだからペンキなどを使うのはやめて欲しいという言葉をよく言われるものである。

まったく話は変わるが、ロンドンオリンピックの柔道を見ていて驚いたことがある。ジュリーとか言う審判団の意見で、一度主審の挙げた旗判定が覆ってしまったのだ。私の感覚では柔道の技の決まったかどうかの判断は、主審及び副審によるその技の精度、つまりイかに「間」がよくはいったかによれば良いのではないかと思う。しかしながら今の国際ルールによると、背中を着くかどうかの厳密さを判定し、見て分らなければスロービデオで判定するということなのだ。こういうこと一つとっても、日本人と西洋人の価値観の違いに気がつく。つまりは余りに厳密すぎる世界にはなんとなく着いていけない感覚を、現代の日本人も昔と同じように有しているのではないかと思うのである。

建築の設計の仕事というのは、家族の暮らす場=間をどのように作るかの提案である。その家族にとって必要な「間」を生み出す設計の手法と、「間」にこめられた曖昧さの持つ良質の美意識を住宅建築に取り入れる手法について、もう少しよく考えてみたい。先のくら的な建築が主流になる現代住宅界ではあるものの、もともとの「間」の良さをなくしてしまってはいけないと感じるのである。そしてそれこそが、もっと自由に暮らすことの出来る住まいというものを生み出すことにつながるのではないかの予感がするのである。

2012/07/28

朝礼終了後、10時ごろより埼玉県富士見市にて新築住宅を検討されているKさんご家族来社。市で公売に出ている土地を購入されての住宅建築ということである。落ち着いた雰囲気のご主人に元気な奥様という第一印象だったのだが、話を始めるとジムニーが趣味というご主人にはどうやら住まいに関しての強いこだわりがありそうな雰囲気が垣間見えてきた。こういうこだわりが伝わったとき、なんとなくであるのだが設計者のアンテナが動く。つまりは良い家が出来そうだナノ感覚が沸くのである。

私たち建築家の仕事は、その敷地の条件や家族構成、そして何よりも住まい手のこだわりを限られたコスト条件の中で如何に実現する為にはという課題に対して、設計の技術だけでなく、コンストラクションマネジメント、つまりは現場の管理までをコントロールすることで答えを出すことに尽きるのである。まさにこれこそが、建築家がローコストの住宅建築に係る理由であり、それができなければ一部の大金持ちの建築だけを設計していれば良いということになる。

下の写真は、2008年に千葉県市川市にて建築したMさんの家である。約2000万円のコストをかけて33坪ほどの床面積の住宅を建てた。床には埼玉県秩父産の正規に床材として販売されている杉板を用い、ロフトの床を構成するスノコ材には赤松の下地材を仕上げ材として利用する為にクライアントご自身でやすりをかけた材料を用いた。壁はますいいでよく登場する高知県土佐市にて生産している田中石灰工業のタナクリームである。もちろんこれもセルフビルドを利用している。そのほかにもイケヤのキッチンなどこだわりとコストのバランスを旨く構成するための工夫が随所に施されている。つまりはこれこそが意匠設計とコストコントロールの実践ということになるのである。工務店機能を持つからこそ、職人と直接つながっているからこそ出来ること、さらに言えば私たちが設計者としてだけで無く、ときには職人に代わりクライアントのセルフビルドのアドバイザーとなるなどの経験があるからこそ出来ることではあるのだが、でもそれが出来なければやっぱりローコスト住宅に係る資格は無いように思うのである。

話しははじめに戻るが、今回のご相談のKさんの家。アウトドア派のご主人と強食に付き忙しくされている奥様、ご両人の要望を満たす良い家を提案できるようスタディー進めていきたい。

md-20120728.jpg夕方より、東京都西東京市にて新築住宅の設計を進めているO様ご夫妻打ち合わせ。今回から生後2ヶ月の赤ちゃんも一緒に打ち合わせに参加することに。今回の打ち合わせで基本設計に大方のめどが付いた。いよいよ実施設計。2月の完成に向けて急ピッチで作業を進めていきたい。

2012/07/27

午前中は昨年東京都町田市に開設した町田分室で採用する予定の堤君の面接。すでに一度田村君の面接を受けているということで、今日は私と社長の面接ということになったのだが、なかなかの好青年であった。何でも食の世界を目指していた経験があるそうで、これからの会社で行うバーベキューにも大きな戦力になりそうな人材である。履歴書に特技「けんすい」と書かれていたのが、設計事務所機能だけでなく工務店機能も併せ持ち、スタッフ全員が現場管理も行うますいいリビングカンパニーらしいところであった。

午後より、埼玉県川口市の川口駅近くのおばあちゃんから受け継ぐ土地の分割販売を検討されているYさん打ち合わせ。一部の販売とはいえ、大きな土地の一部を売却する場合はその後の流れ、つまりは道路をこんな風に造成して、何坪くらいの土地を何区画つくるという計画を立てておかないことには、町でよく見かける行き当たりばったりの無計画な虫食いの土地を作ってしまうことになるので注意が必要だ。今日のところはその計画のご相談と、それにあわせて計画している母屋の改修工事についてのお話をすることとなった。

2012/07/23

月曜日。先週はとても忙しかったのでまだ疲れが残っている。左のくびから肩にかけてのこりがひどいようで、後ろを振り向くことが出来ない。うーん、40歳が近づいてくるにつれてこれまで経験をしたことが無いような体の不調を感じることが多くなったように思う。やっぱり人間はそれなりに老化するのであろうか。

朝礼時、ますいいメモ帖なる形で、防備録を兼ねた小冊子の作成を指示。ここには会社の経営理念から取引先のリスト、設計時の危険回避の納まり図集、そして現場における工事監理チェックシートなどを収録する予定である。ざっと20ページほどの厳選された情報のみの掲載をして、残りは方眼紙状のメモ用紙として利用できるように考えている。印刷屋さんの友人に見積もりを取ったところどうやら一冊あたり300円ほどで製作できるそうである。この金額で、いつでもどこでも重要事項を確認できるようになるならば安いものだ。スタッフ全員のスキルアップにつながると予想できることであれば、何でもやってみる、そんな行為の一環である。

先日まで埼玉県所沢市にて進行していたS先生の家の改修工事が完成した。S先生は言語学者としてテレビ等でも活躍された方で、某大学の教授を勤められていた方である。長年住み続けた古い2階建ての住宅を補強し、これからの余生を過ごすことができるようお色直しを施した。左上の写真のみは改修工事前のものである。そのほかの写真はあたらしくなったキッチンやリビングなどで、一見新築同様に仕上がっている様子が分る。

わたしは最近特にリフォーム工事が好きになった。たいていの人は30~40代で家を建てる。そこで子供を育て、人生の最も活発な時期を過ごす。やがて子供達は自立し、家を出て、残るのはまた夫婦二人である。最近は結婚の時期が遅くなっているので、年齢にして60歳前後であろうか。住宅の年齢は25歳程度であろう。仕上げは古びて、だいぶガタが来ているころだ。でもその家には、それまで過ごした記憶やらの足跡が確実に残っている。人生とは、そんな記憶と共に過ごしていくものではないだろうか。なくしてはならない大切なアルバム、古い家も同じようなものだと思う。

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2012/07/18

朝礼終了後、埼玉県川島町に建てたカフェ「アスタリスク」の取材立会い。10時に桶川駅にて住まいの設計の家を愉しむ人々なるコーナーのライターさんをしている松井編集室・松井さんとカメラマン・キッチンミノルさんと待ち合わせし、アスタリスクへ向かった。

このカフェは、ますいいが1250万円ほどで建てた超ローコスト建築である。私が建築監修をしているビックコミックスペリオールの漫画「匠三代」のストーリーにもなったこの建築が完成して早くも半年ほど経過しているが、一つの建築がここまですばらしい形で歩き出している姿を見て、本当に嬉しい気持ちになった。

この建築のクライアントは一番上の写真左に写っている平山さんご夫妻である。会社をリタイアし、奥様と二人でゆっくりとカフェをやりたい。お金はそんなに掛けたくないけれど自分達でできることは自分達でやる。時間をかけてゆっくりと自分達の居場所を作っていきたい。はじめは確かそんな相談だったように覚えている。1階をカフェ、2階を住宅、仕上げなどは最低限にすることでコストを抑えた。内装には決してお金をかけていないけれど、ご夫妻の卓越したセンスで、普通に仕上げてしまうよりもかえって豊かな空間に仕上げられているように感じた。以前、美大を卒業された広告代理店の方の住宅を建てたときにも感じたことだが、ごくまれに職人よりも旨くセルフビルドをこなし、そしてますいいのスタッフよりも旨く住宅の内装を作り上げるクライアントがいるのだが、ご夫妻はまさにそんな旨さを持っている。

そんな旨さもあってか、カフェの雰囲気はとても心地が良い。ゆったりと流れる時間を夫婦二人で楽しみに来たり、女性同士の時間を愉しむには最適な場所である。ゆえに今回の取材の最中も、15人程度しかない席がほとんど常時満席であった。二人だけできりもみするも、まったくあわただしい様子も無く、落ち着いて仕事をこなしている。これまたメニューの創案段階から含めて、二人だけで出来るカフェを旨く作り上げているのである。

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右がライターの松井さん。歩いているのがカメラマンのキッチンミノルさん。

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席の数が少ないので、左の写真の窓の先に増築することを考えている。
店内にはご夫妻がこだわって集めた家具が置かれている。

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エントランスの外構工事もすべてセルフビルドで行った。
枕木や砂利などのアイテムをうまく使い、すばらしいエントランスが完成している。

2012/07/16

午前中はOZONよりご紹介の、埼玉県川口市にて家を建てたいと計画しているNさんご夫妻打ち合わせ。幅員が狭く細長い土地に対してどのような住宅が建つのかについてのお話など。

今回の計画のように5mほどの幅の狭い土地形状の場合、その土地に対して最大限に車庫スペースや住居スペースを確保しようとすると、構造としては鉄骨造が有利となる。幅の狭い狭小地に建つ3階建て、しかも1階には駐車スペースとなると、どうしてもその形状は不安定なものになりやすいからだ。

下の写真は以前ますいいで建てた鉄骨造の住宅である。これらの住宅では鉄骨造といってその構造柱には100角の柱を利用している。大規模建築であれば通常の300角程度のコラム柱を用いて、柱と梁の接合部の強度で耐震力を確保するいわゆるラーメン工法というものが主流であるのだが、住宅の場合にはそのサイズの柱が内部に出てくることがどうしても邪魔になる。そこで、100角、つまり木造の場合に使用する杉や檜の柱とほぼ同等の太さの柱を使用し、柱と梁の接合部の強度に頼るのではなく、通常の木造建築のように筋交いの強度に頼るブレース構造とすることで、確かに手間はかかるし部材の数も多くなるのだが、住宅設計の繊細さに利用しやすい工法となるのである。

さらに鉄の強度を最大限に利用できるこの工法の場合、左上の写真のような跳ね出し構造も可能となる。駐車スペースなどを限られた中で確保する場合などに、開放感を確保しながら構造体として成立させるときには、この鉄鋼造の跳ね出しというのは非常に有効な手段である。重量が軽く、さらに強度の強い鉄ならではの手法であり、だからこそ橋などの土木構造物も大きくなればなるほどに最後は鐵骨造になるのであろう。

建築の構造とは、適材適所がふさわしい。用もないのに奇をてらうために鐵骨造など使用する必要もなく、かっこいいからRC造などと考える必要もない。しかしながら、その敷地の条件や家族構成などの建築の与条件が望む場合には、今回のように適材適所の対応をしていきたいと考えている。それこそが設計の力であろう。

md-20120716.jpg夕方より町田分室の田村や森脇も含めてスタッフ全員参加のバーベキュー。月に1回ほどやっているのだが、現場での出来事などの色々な話が出来るので良い。やっぱりこれくらいのことが出来る庭というのは欲しいものである。

2012/07/13

九州では豪雨による被害が続いている。気候変動による被害が顕在化しているが、これは住宅の作り方にも影響を与える、というより変化せざるを得ない状況にある。日本の住宅は基礎の上に木造住宅を作ることがスタンダードであることはすべての人の共通認識であろう。しかしながらここまで亜熱帯気候的な状況になってくると、そもそも木造住宅を地面に直接作ること自体も、なんとなく不安な気もするのである。

近代に入る以前の日本の住宅地は比較的高台と呼ばれるようなところに展開していた。今私の会社があるような平地は、いわゆる田畑の用地であり、大水などの被害は住宅とは関係がなかった。しかし今は違う。所狭しと住宅が建ち、平地も高台もないのである。確かに昔とは比べ物にならないような大掛かりな堤防も敷設されている。でも今回の九州ではそれも壊れてしまっている。またもや想定外、気象庁はこれまで経験したことの無いようなという別の表現を使っていたが、要するに津波のときと同じことが起きてしまったのだ。

今回の事例を見ていると、せめて1階だけでもRC(鉄筋コンクリート)であったら、助かる住宅は多いだろうということを感じた。延べ床面積が30坪程度の木造のコストと比較すると、軟弱地盤の杭工事の増額を考慮しなければ、同じ規模であればおそらく500万円増というところであろう。30坪の住宅を1800万円で作ることを考えていれば、それが2300万円程度で水害にも強くなるわけである。(軟弱地盤の場合はコンクリートの重さに耐えられるようにするための杭工事に多くの費用を要するので注意が必要。)

写真は2008年にますいいで建てた埼玉県川口市本町の住宅である。この住宅はきっと荒川が氾濫しても無事なのであろうな。

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2012/07/12

午前中は事務所にて各プロジェクトの打ち合わせ。

14時より事務所にて、川口駅から徒歩10分ぐらいのところで40坪ほどの土地を売却したいというYさん打ち合わせ。おばあちゃんの世代から住んでいる住宅と駐車場、そして小さな賃貸マンションを所有している中の一部を売却し、自宅の改修工事とおばあちゃんの医療にかかるお金を工面するという計画である。街中の土地を所有するというのはそれなりに苦労するもので、特に現代の日本社会では固定資産税と相続税の支払い義務が非常に大きな負担だ。これについてはもはや国の政策というより仕方がなく、なるべく資産を細分化し、多くの人に資産形成の機会を与えるという方向で進んでいるので、よほどの収益をその資産から生み出している会社以外には、維持すること自体が無理なのである。

このような状況は都市部の魅力ある住宅街の景観をどんどん変えている。例えば縁あってこれまで2件の住宅を建てさせていただいている自由が丘という住宅街も、一つ一つの区画が広く、しかも低層住居だけが建ち並んでいる、非常に閑静な住宅街として魅力があったわけだが、近年ではその拾い区画を20坪程度に細分化した分譲地が非常に多く売り出されており、昔ながらの広い庭のある邸宅が立ち並ぶという景観はその姿を失いつつある。確かに多くの人に自由ヶ丘に住むという機会を与えることにはつながっており、それはすべての人に平等に機会を与えることにはなっているのであろうが、しかしながら都市の魅力をまた一つ失っているということだけは確かなのである。

思うに日本の都市で魅力を感じるような景観が残っているようなところがどれだけあるであろうか。京都でさえも祇園や清水寺周辺などの一部の地域を除いては、昔ながらの面影を残しているといえるような地域はほとんど無く、白川郷のごとき田舎の観光地くらいしか思い浮かべることは出来まい。これまたすべて、税制による都市の景観破壊、文化の破壊なのであろう。

ちなみに2010年の外国人訪問者数の統計によれば、日本は世界で30位と低迷している。一位フランス7880万人・5位イタリア4362万人・15位カナダ1600万人・20位マカオ1190万人・25位モロッコ921万人なのに対し、日本はわずか861万人である。クロアチアや韓国よりも低いというのが現状だ。資源を持たず製造業もいまいちな近年の日本において、観光産業を活性化させようとの動きは一見目立ってきているが、どれだけ日本向けツアー商品の企画をしたところで、その国自体に魅力がないのでは人が集まるわけはないのである。

ちなみに観光世界一を誇るフランスからの訪日者が日本に対して期待していることのトップファイブが興味深い。
食事
歴史的、伝統的な景観
日本人の生活・日本人との交流
都市の景観・繁華街の賑わい
日本の伝統文化の体験・鑑賞

それに対して、中国人観光客が日本に期待していることは
自然四季・田園風景
ショッピング
温泉
食事
都市の景観・繁華街の賑わい

となっている。明治時代に見られた旧岩崎邸のような富裕層の邸宅のごとき町並みを形作る建築の誕生を望むことは不可能であるが、しかしながらその場所の質を作り上げる手段は建築以外において他にはなく、そこに食事や人という要素が加わったときにこそリアルな体験としての魅力を感じることが出来るのであるからこそ、より一層社会における建築の役割は大きいように思えるのである。

最初に戻る。Yさんは自分の売却した土地にますいいさんの建物が建ってより良い町並みの形成をして欲しいといってくれたし、だからますいいさんに依頼するといってくれたのである。この気持ちはとても大きい。今の不動産取引の仕組みの中で何が出来るか、少々考えてみよう。

2012/07/10

午前中、東京都西東京市にて設計中のOさんの家社内打ち合わせ。16日のプラン提案に向けての変更庵についての意見交換など。

続いて、埼玉県さいたま市にて設計中の武蔵野クラフトワークス改修工事についての社内打ち合わせ。厳しいコストの中でどのように打ち合わせを進めていくかなどについて。ローコストでの工事の場合、何を優先するかの判断を慎重にしなければ、何の為のリフォームだか分らないくらいに思い通りの結果の得られない工事になってしまう。できること、出来ないことの判断も大切だが、まずは理想像を立ち上げることが先決だろう。その理想像に少しでも近づける為の方策を考えるのが次に大切な仕事である。どちらにしても、魅力的なカフェを造らなければ何の意味もないのだから、それに向けて知恵を絞っていこう。

夜、ジャン・リュック・ゴダール「軽蔑」鑑賞。当時2年前に結婚したゴダールが、自身のなかなかうまくいかない夫婦間の愛を題材に描いた映画。この映画には1930年後半に作られたアダルベルト・リベラのマラパルテ邸という有名な建築が登場する。屋上の階段の写真は誰でも一度は見たことがあるだろう。当時のファシズムとも深く関係していたマラパルテの知人であるドイツ軍のロンメル総軍がアフリカ戦線に行く途中で立ち寄った際に、マラパルテはロンメルに「崖、巨岩、ソレント岬、アマルフィ海岸、パエストゥムの岸、これらの光景は私がデザインした」と説明しているそうだ。女優ブリジット・バルドーの美貌もそうだが、この建築を見ることが出来るだけでも見る価値がある映画だと思う。

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2012/07/09

朝一番で東京都目黒区の自由ヶ丘の家にて打ち合わせ。以前建てた住宅の増築のご相談である。今回は担当していただく予定の大工さんと池上君と一緒に、設計図面を見ながらの説明を伺った。増築といってもほとんど新築のような工事である。一部の取り合い部分のみをどのように進めるかの工夫をすればいつもどおりうまくいくであろう。

夜、フェデリコ・フェリーニ「道」鑑賞。この映画は1954年のイタリアで撮られたネオリアリズム映画。戦後の貧しいイタリアの町で、旅芸人のサンバノと、そのサンバノが金で買った主演の女(ジュリエッタ・マシーナ)のジェルソミーナの物語だ。サンバノの非人間的な暴力とジェルソミーナの死、そして最終的なサンバノの悲しみ。一見悲しみにあふれるストーリーを、コミカルに描き出しているあたりがイタリアらしいところといえるであろう。この時代の映画は時間がゆっくりと流れている。ストーリーというほどのものはなく、人の心の移り変わりを、絵画や彫刻などを交えながら、描き出す。見ている側もただ見ていればわかるというのではなく、常に何かを考えさせられる。そしてそこには、一つの答えなどない。まるで実際の社会のように、受け手の側次第で幾通りもの答えが生まれる。そんなところが面白い。

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2012/07/07

午前中は事務所にて雑務。

15時より、東京都西東京市にて設計中のOさんの家打ち合わせ。基本設計3回目のプラン提案となる打ち合わせだったのだが、この敷地で考えうる大まかなバリエーションについてはすべて提案しきったという感覚を持つことのできる打ち合わせであった。この敷地は大学の敷地である農園に北側で接しているという特徴を持つ。道路は南側だから、結果的に南北に開けている。この北側の開放感をどのように暮らしに取り込むかが一つのポイントであろう。今後は、それぞれのプランの中で大切にしたい要素を抽出し、再度構成しなおすことで、暮らしやすさを尊重しながらも、敷地の持つ特徴を生かした魅力的な建築となるように作り上げていく作業となるであろう。

北側に緑地帯を持つ住宅というと2007年に建築した浜田山の家を思い出す。この住宅は南側に生活道路を持ち、その向こう側の敷地は一段固い住宅地となっているので南側に開く設計をすると見下ろされるようになってしまうという条件であった。その代わりに北側には見渡す限りに広がる善福寺川の緑地帯を持ち、非常に開放感のある魅力的な景色を持っている。そこで、南に対しては下の写真のように最低限の通風窓のみを配置し閉じる設計とし、逆に北側に対して左上の写真のように大きな木製建具によって大きく開く設計としたのである。右上の写真は玄関ホールだ。玄関を入ると正面に北側の風景を切り取るピクチャーウインドウを配した。通常の南側に開く設計が当たり前と思っているところからすると、まさに敷地条件に適した設計といえるであろう。

md-20120707.jpg夜は、川口駅前にあるストックヤードにて友人の結婚披露パーティーに参加。かれこれ2005年以来のお付き合いの友人だが、45歳にしてようやく初婚。本当に何よりであった。こういう席があると普段は集まらないようなメンバーが当たり前のように集まることが出来、そして昔話やお互いの近況報告に花を咲かす大切な時間を得ることができる。そんなきっかけともなってくれた友人のEさんに感謝感謝である。

2012/07/05

磯崎新「建築・美術をめぐる10の事件簿」読了。15世紀から現代に至るまでを100年ごとに区切り、近代は50年ごとに区切ることで、時代の変化を引き起こしたといえるような大きなエピソードについての見解を著者と評論家の対談形式でまとめたものである。

続いて、磯崎新の建築談義09「サン・カルロ・アッレ・クァトロ・フォンターネ聖堂」読了。17世紀イタリアで活躍したフランチェスコ・ボロッミーニの生み出したバロック建築の傑作についての著書である。

それにしてもこういう本を読んでいるとどうしても本物を見にその地まで足を運びたくなるものだ。イタリアのローマは2000年に10日間ほど滞在したことがあるのだが、来年当たりにもう一度行ってみようと思う。

2012/07/03

午前中は事務所にて各プロジェクト打ち合わせ。

午後より2時間ほどお茶のお稽古に。7月ということで葉蓋(実際の葉を蓋として利用する点前)の薄茶点前をすることに。暑くなるこの時期に、少しでも涼しげな雰囲気で客をもてなそうという工夫ということであるが、こういう心構えは今の時代にも通じる大切なものだとおもう。みずみずしい緑の葉と、華やかな末廣籠の受け筒がなんとなく心を清らかにしてくれる、そんなひとときであった。

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2012/07/02

梅雨にしてはいつもより雨も少なく、気温も低いように感じる。節電を強いられる夏だけに、35℃を越えるような猛暑がなるべく来ないでくれれば良いと思うのでだが梅雨が明ければきっとそういう日々が続くことになるんだろう。庭の柿の木もだんだん大きくなってきた。昨年は四つの実をつけたのだが今年は今のところ10個ほどの実をつけている。このまま落ちずに赤赤と実ってくれれば良い。昨年の震災以来、こういう当たり前のことが当たり前に過ぎ去っていくことに対して感謝をしなければいけないという感覚が強くなっているように感じる。今こうして平安に暮らしていることができることも、長い歴史の中では奇跡的なこと。少しでも長く今のこの平安を保っていたいものだ。

md-20120702.jpg最近景気の不安感からかローコスト住宅の割合がまた増えているように感じる。まあもともと住宅に必要以上のコストをかけることに反対する意見を表明しているので、景気に左右されているのかどうかは微妙なところなのだが、仕事をしている中でのなんとなくの感覚である。ローコスト住宅といっても、何も建売のような貧相なものを指しているわけではない。こだわる部分はこだわり、その土地とクライアントの嗜好を生かした上で、無駄な部分はぎりぎりまでそぎ落とす、そんな住宅を指している。

下の写真は、ますいいの水道工事をやっていただいている関さんの家だ。もう10年ほどになろうか。私がはじめて知らない人の家を建てさせていただいた、1500万円ほどの住宅である。3方を道路に囲まれた土地に建つ2階建て、ロフト付の小さな住宅だが、小さいながらも視線の広がりを感じる居心地の良い住宅を目指した。仕上げにはシナ合板にかき渋塗装を施し、床にはヒノキのフロアリングを貼っている。ロフトには屋根に通じる窓を開け、家全体の空気の流れを作るよう心がけた。決して無理のない、でも魅力的な住宅ができたと今でも思っている。

md-20120702-1.jpg住宅を魅力的にする要素とは?こういうことを考えるととりとめもないのだが、いくつか思いつくままに羅列してみよう。

景色・庭・玄関までのアプローチ・程よい大きさのキッチン・3間角(18畳)くらいの大きさの居間兼食堂(この大きさは吉村順三さんが居心地の良い寸法として示しているものだがローコスト住宅の場合はもう少し小さくする必要がある)・自然に面した窓を持つ吹き抜け・・・細かいところに入っていけばきりがないが、大まかに言うとこんな条件だろう。それをどう作るかの工夫が設計である。しかもコストはなるべくかけないほうが良い。その方が結果的にうまくいく、それもこれまでの経験から言えることである。

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