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01 物の値段の決まり方
01-1 杉の大黒柱の値段
住宅のコストは一つ一つのものの値段の積み重ねできまる。よく坪○○万円という呼び方をするが、あれほどいい加減な値段の表示方法はない。確かに理解することは簡単になる。しかし、価格がきまる過程を見えにくくし、価格のブラックボックスを作ってしまっていることも事実である。
昔の家作りでは、クライアントがある程度の知識を持っていた。間取りはその地方ごとに決まった様式というものが存在し、それを自分の土地にあうようにちょっとアレンジするだけで簡単につくることができた。大工は徒弟制度の中で身に着けた能力を持ち、図面化しなくてもその間取り図だけで材料を発注し、家を創り上げることができたのである。
しかし、ハウスメーカーや建売の坪いくらという表示になれてしまった現代人は、まるで車を買うように家を考えることが一般的になってしまっている。マンションを購入することを、住宅を建てるよりも早くに経験してしまっているということも原因のひとつかもしれない。マンションのチラシにある「ディスポーザー付のキッチンやユニットバス標準装備で○○万円」という考え方になれてしまったことが、坪いくらの家作りにつながっているともいえるだろう。
船橋の家では、160ミリ角の大黒柱をたてた。材質は杉、節はない。長さは4500ミリ。さてこの柱一体いくらだと思いますか?
10万円?確かに普通の材木屋さんに言ったら10万円くらいの値段はつけられるだろう。

(船橋の家の大黒柱)
この柱、実は50000円で買えた。丸太を天然で乾燥させ、更に乾燥機にかけたものを製材し、プレーナーという機械で仕上げる。断面寸法は170ミリ。長さは4.5メートルの柱が50000円で手に入るにはわけがある。
普通に街の材木屋さんに探しに言った場合は、材木屋さんの営業マンがまず問屋さんに行く。問屋さんでは付き合いのある製材所やメーカーに問い合わせ、こちらの指定した寸法の材木を探す。しかも埼玉県の場合はそれほど有名な産地が無い。大手材木問屋はたいていの場合このような注文に対し、木曽ヒノキや東北の杉を勧めてくる。
たまたまあったものを仕入れ、材木屋さんに卸す。それを購入するわけだが、この重層構造に頼って物を仕入れるとどうしても高くなってしまう。
考えてみて欲しい。材木屋さんの営業マンの給料、問屋さんの社員の給料、木曽ヒノキを運んでくる運賃、そのようなものが全て加算されてしまうのである。それぞれが一日の労働をしたとして、それが2万円だったとしても5万円が簡単に10万円になってしまう。
今回、この柱は埼玉県の飯能にある森林組合が運営するフォレスト西川という製材所で購入した。森林組合だから丸太のアリカを知っている。あそこにあのサイズの丸太があるぞということでそれを持ってきて、乾燥させて、製材する。それをダイレクトに運搬するのである。無駄な経費はどこにもかかっていない。
断面寸法70ミリ角の長さ4.5メートルの柱。これを50000円という安値で購入できるにはさらにもうひとつのコツがある。それは細かいことをつべこべ言わないということである。
通常、柱の数法の基準というのは3寸5分(105ミリ)角、4寸(120ミリ)角、という風に決まっている。これは古くから用いられてきたモジュールであり、いまだに日本の住宅の現場においては当たり前の規格として用いられている。大工さんが使うスケールなどの道具には、センチメートルの表記と尺、寸の表記が両方されているものだ。
このような規格の中でものを考えるとどうしても注文する際に6寸角、つまり180ミリ角の材料をくださいといってしまう。設計をしていてもある寸法を決めないと実際の図面をCADに入力することが出来ないので、キリの良い寸法を書いてしまうものだ。
しかし、木は生き物である。ちょうど180ミリのところに節が無いような木を育てることは誰にも出来ない。たまたまその場所に節が無さそうな木を探して、製材して、やっぱりあったらその材料は使えない。だめとなったらほかの原木をまた探す。それを繰り返して出てきた一品の値段。このようにして手に入れる柱の値段となると、それはそれは高価なものになってしまうだろう。
それに対して、この現場の柱は、だいたい180ミリくらいの断面寸法のものできれいな柱を探しているんですけど・・・という注文をした。これなら180ミリに削ったところで節が出てきても、もう少し削ればきれいになると思ったらあと1センチ削ってみる。そしたらたまたまきれいな面が出てきた。だからその寸法のものを売ってしまおう。と出来るわけだ。ぴったりの寸法をいうことで、製材する側には逃げが無くなってしまう。しかし、だいたいこれくらいの大きさで、という注文をするとたまたまあったそろそろ売り時の丸太を削りだして、ちょうどきれいな面が出てきたところで売ることが出来るので、安くなる。そんな小さなことでも物の値段は大きく変わるのである。
図面の弊害、まさにそれだろう。図面に表記されているから1ミリでも足りないと手抜きだといわれる。1ミリでも大きいとやり直し。でもそんなことに何の意味があるの?
もちろん複雑な構造の中で、ほかの材料とのからみがあれば寸法をそろえる必要も出てくる。しかし、何の取り合いも無い独立柱の場合は、構造から決定される最低寸法を満たしていれば、その寸法はだいたいでよいのだ。
だいたい何ミリ。そういうおおらかな注文方法がコストを下げることは意外と多い。
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