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土地選びの写真

土地選びのポイント

土地選びは家づくりの最初にやらなければいけない大きな仕事である。僕のところに来るクライアントの多くは、土地に予算の大半を使い果たし、わずかな残りで家を作ってほしいという方がとても多い。総額5000万円くらいだとしたら、まず3000万円は土地に使ってしまっている。諸経費を引いた1800万円程度が建物の予算に残っていれば良いほうであろう。実際に建築を作る僕たちには厳しい話なのだけれど、土地に資金の大半をつぎ込んでしまうという現実は仕方が無いものだと思う。日本の社会では中古住宅がある一定の期間を過ぎると資産としてみなされず、それゆえ土地に資産価値を求める傾向がある。さらに土地の値段が高すぎるのだ。そんな中、高い土地を買うからには、それなりの判断材料が必要だと思う。ここでは初めて家を作る方が土地を買う際に参考になる話をご紹介したい。

・法律による制限
まず、土地を購入する際に気にしてほしいのは、建蔽率・容積率や用途地域、防火規制などの法律による規制である。建蔽率や容積率、用途地域というのは、建ててよい建築物の用途や規模を定めている法律で、それぞれの地域によって異なる条件が設定されている。 (建蔽率・容積率・用途地域) 例えば閑静な住宅街を形成しようという場合には、建蔽率40%、容積率80%というとても低い数値が定められている場合もある。もしこのような数値が決められていると、その土地に建てて良い建物の水平灯影面積は土地の面積の40%しかないことになり、またそこに建てて良い建物の延べ床面積は土地の面積の80%しかないことになる。こういう土地のある住宅街は大体人気のある住宅街で土地の値段は高価な場合が多いので、例えば坪単価120万円で30坪の土地を購入し、総額3600万円も支払ったにもかかわらず、ワンフロア―12坪の延べ床面積24坪の住宅しか作ることが出来ないという落とし穴が待っていることとなる。
でも、このように小さな土地に小さな住宅を造らなければならなくなってしまった場合でも地下室を利用して、豊かな空間を生み出した事例もある。地下室とは厳密にいうと地上部分に1200㎜までしか出っ張っていない部屋のことを言うのだが、こういう部屋はなんと容積率の算定から除外してよいことになっている。ということは、その部屋を寝室などに利用することで、普通に建てたら容積率制限のために作ることが出来なかった部屋を、上記の例に当てはめて考えれば最大12坪分も作ることが出来るというわけである。

もし仮にある土地が第一種低層住居専用地域の南6m道路の土地だったとしよう。この用途地域においては北側斜線制限という、建物の高さを制限するとても厳しい規制が設けられている。つまり北側の隣地境界線上のある高さから、ある勾配の斜線で土地に建つ建物の高さを制限しているわけだが、敷地の北側、つまり道路と反対側から、この斜線制限を受けてしまうことで、実際に建物を作ることが出来る許容空間は一気に削り取られてしまうことになる。もちろん道路側からは道路斜線制限なる制限がかかってくる。もともと狭い土地で、表と裏の挟み撃ちでの制限を受けると、設計上とても厳しい条件となってしまうのである。
でももし、道路が北側6mであったらどうだろうか。北側斜線制限の制限と道路斜線制限の制限が同じ方向からくることで、この土地の建物の高さを区切るための制限は一方向だけになる。道路側については厳しい斜線制限を受けてしまうものの、土地の奥、つまり南側の建物の高さは最大限高くすることが出来るので、そこにロフトを設けるなどの工夫も可能となる。そのロフトの壁面に開口部を設け、さらに2階のリビングに吹き抜けを作るなどすれば、南側の高い壁面からの光を2階リビングに取り込むことも出来る。北側道路というと、なんとなく悪い条件のような気がするのだけれど、建物の空間を大きく取ることが出来ることで逆にのびやかで開放感のある住宅を造ることが出来るという場合もあるのだ。

(防火規制)
もう一つ家づくりの中で、コストにとても大きく影響するだけでなく、その住宅の魅力を作るうえでもとても大きな影響を及ぼす制限に、防火規制がある。一般的な土地には22条制限、準防火地域、防火地域という制限があって、それぞれ異なる制限がある。
ここでは詳しい制限は省略するが、通常の30坪程度の木造住宅を造る場合の注意点を簡単に言うと、22条地域では簡単な防火仕様を採用するだけで特に何も考えなくてよく、準防火地域では2階建てまでは22条地域とほとんど同じ、3階建てになると内部の木構造を石膏ボードなどの材料で隠したり、開口部の防火性能を上げなければいけないなどの制限が厳しくなる。防火地域の場合には、3階建ては作ること自体が不可能ではないけれど、不可能と呼びたくなるくらいにとても難しくなり、2階建てでも100平米を超える場合には、耐火建築物か準耐火建築物にしなければいけないという制限が付く。
こうやって聞いていてもよくわからないかもしれないけれど、この制限の違いが結構コストの差として表れてくるから注意が必要だ。例えば開口部の防火性能を上げるためのサッシと普通の性能のサッシの値段を比べると、普通の住宅で60万円くらいで購入が可能なサッシの値段が、簡単に3倍近くまで跳ね上がることになる。もし仮に、30坪の住宅で、サッシの差額が90万円だとすると、坪単価にして住宅の値段を3万円も押し上げる要因となってしまうのだ。
そしてもう一つ、防火制限が建物の魅力にも影響を及ぼすことがある。僕のところに住宅の依頼に来てくれるクライアントはローコスト住宅を求めてくる。これまでいろいろなローコスト住宅を造ってきたけれど、極限までコストを落とすことに挑戦し、それがとてもうまくできた事例に川島町のカフェ兼住宅がある。でも、もしも防火規制が厳しかったらこのカフェはこんな風に作ることはできなかった。その訳を少々お話ししよう。
「川島町のカフェ兼住宅」はこれまで企業でお勤めをしていたミドルエイジのご主人が、退職し、スローライフカフェを楽しみながら生活の拠点となるような建築を造りたいという思いからスタートした。敷地は160坪ほどあり、南北に細長い形状をしている。カフェを営む傍らでハーブなどを育てる簡単なガーデニングを楽しみ、来てくれたお客さんと一緒に過ごすことのできる庭が欲しい。家は2階に最低限のスペースがあれば良く、豪華な設備などは不要だ。建築はなるべくローコストでお願いしたい。できることは自分でやる。前の家に合った古い建具など利用できるものはなるべく利用したい。これがクライアントのHさんから聞いた言葉である。
この依頼を受けて、私はこの建築を長野県の入笠山にある大好きな建築「入笠小屋」をイメージして作り始めた。この小屋は詩人の尾崎喜八さんが戦火を逃れるために疎開したときに作ったとのことだが、今では小間井さんという初老の主が宿泊客を迎えてくれる。

入笠小屋外
入笠小屋内

写真のガラス張りのリビングは小間井さんの手によるセルフビルドだ。聞くところによると毎日、毎日セルフビルドでどこかを直し続けているということ。周りを見回してみると、例えば杉の貫板という雑材料で窓枠を作っているところもあれば、本当にこれでよいの?と疑ってしまうような、雑だけれど手作りの温かみが伝わってくる暖炉、連続してガラスがはめ込まれている普通に作れば多くのコストがかかりそうな羽目殺し窓が、90角くらいの雑材を組み合わせて、いとも簡単に作られている様子、どうやって防水しているのかまったくわからないような3階に作られた天空を仰ぐ露天風呂、そしてそこに上っていくためのくねくねとした長い長い渡り廊下、ここには一般常識では考えられないような自由な建築があるのだ。
日本の建築は高すぎる、これは歴然とした事実だ。それに反してこの建築は小間井さんの手によって、法律も一般的な収まりもすべて無視した自由な作品である。そして、ものすごく安く作られている。虫が入ってきたり、隙間風が吹いたりの苦労は当然ある。しかし、肌寒い季節に暖炉に火を入れてゆったりとくつろいでいるとき、そんなことすら愛おしく思えてくるのだ。
この小屋のイメージをコンセプトとして設計した川島町のカフェ兼住宅では、入笠小屋と同じように木造の構造体がそのまま表しで使われている。

カフェアスタリスク外
カフェアスタリスク内


ローコストで心地よい空間を造ろうとしたとき、仕上げを最低限に抑えて、しかも魅力的な風合いを作り出すために、木造の建築物がその存在のためにもともと持っている構造体自体を表しにするという手法はとても効果的である。僕はローコスト住宅をたくさん作っているうちに、この手法が最も効果的にコスト抑えながら豊かな空間を造り出すことが出来る方法であることに気が付いた。でも、先ほども書いたように準耐火建築物を造らなければいけないような土地ではこの手法を採用することはできなくなってしまう。写真に写る構造を担う木部には石膏ボードをまくなどの防火処理が必要となり、その上には漆喰や塗装の仕上げを施さなければならなくなる。こういう仕上げにはそれなりの予算が必要になるわけだが、それを抑えようとビニルクロスなんて貼ろうものなら、急に建売住宅のような様相を呈してしまうのだ。もちろんお金をある程度使ってよいという場合にはこの限りではない。あくまでローコスト住宅を造ろうという場合にはこの防火規制の影響が、空間の持つ魅力にも影響を及ぼすことになるということを覚えておいてほしい。

・地型の話
土地の形状はさまざまである。普通は道路に面した長方形で、もちろんそういう整形地が最も設計しやすくて、使いやすいのだけれど、でもそういう土地は値段も高い。旗竿地や変形地であれば周辺相場よりも安く土地を取得することも可能なので、どうしても限られた予算内で、どこかの駅から徒歩10分圏内というような好条件の土地を購入しようという場合には検討の余地があると思う。

三角のいえ

ここでは三角形の小さな土地に、三角形の住宅を造った事例をご紹介したい。この住宅のクライアントは僕と同世代のお母さんと娘さんである。どうしても都心のご実家の近くに、しかも駅から徒歩圏内の場所で、新築の一戸建てを手に入れたい。もちろん予算はなるべく抑えなければならない。この条件での土地探しに、クライアントのTさんはちょっとこわもてのガタイの良い不動産屋さんとペアを組んで取り組んでいた。ある日Tさんからメールを受けとり、とある土地のお話を聞くと、その土地は傾斜地にある土地で道路の幅がとても狭く、建設資材の搬入も難しいような場所であるという。そんな具合に、がタイの良い不動産屋さんから送られてくる気に入った土地の情報が手に入ると、僕のところにメールが来る。それに対して僕が答える、そんなやり取りをしていくうちにある一つの土地にたどり着いた。その土地は面積が16坪ほどしかない三角形の土地である。幅4mほどの狭い道路の一番奥、ちょっと薄暗い印象の道路の一番奥に古い住宅がのっている、そんな土地であった。これまでのようにこの土地もNGかなと思っていたら、裏側に魅力的な緑道があるというお話を聞いた。そこで、裏に回ってみるとそこには、街中に流れる小さな川に蓋をした緑道があって、車は通ることが出来ない歩行者専用の通路となっていた。その道はまっすぐに歩いていくと駅のほうに向かっており、人通りも多い、昔懐かしい路地の様相を持っていた。しばらくその土地を眺めているうちになんとなくではあるけれど、この場所なら良い家ができるのではないだろうかの予感がした。僕はクライアントのTさんに購入を勧め、その土地での家づくりが始まることとなったのである。
この土地は車もとめることが出来ない、庭も作ることが出来ない、ちょっと条件の悪い土地である。でもTさんにとっては、ほどよい豊かな生活の空間を造ることが出来た土地である。変形地は資産価値が低い。でも購入する値段も安い。その土地の持つ条件が自分たちの生活にもしあっているだとしたら、変形地を採用することによって大幅なコストダウンが可能なのである。土地の購入の際には、ただでさえ値段の高いものだからこそ、本当に自分にとって必要な土地とはの熟考の末に購入することをお勧めしたい。

・傾斜地
もう一つ注意してほしいのは傾斜地である。傾斜地に家を建てるためには、敷地を平らにするための擁壁が必要となるわけであるが、その土地にもともとある古い擁壁の構造的な安全性の確認というのはとても難しい。そもそも古い擁壁の場合、図面や確認申請などの書類が残っているケースは少ない。だからと言ってその形状を確かめようにも、その半分は土に埋まっているわけだし、コンクリートの中にある鉄筋を確かめようにも、それなりの専門的なそしてお金のかかる検査が必要となるのだ。仮にそこまでお金をかけて検査をしたとしても、構造的に現在の基準と照らし合わせてNGが出てしまえば、最悪の場合、造り直さなければいけないということになってしまう。ここで皆さんに言っておきたい。土木工事にはお金がかかる。住宅の世界では考えられないくらいに、高いお金がかかるのである。木造住宅の基礎工事であれば、せいぜい10立米程度の土をいじるだけであるのだが、擁壁工事となるとわけが違う。その擁壁を作るために崖の高さと同じくらいの部分の土を掘りだし、一時的にどこかに仮置きして、工事完了後にそれをまたもってくるという大工事が必要となるのである。
このように土地に関する話は尽きることがないほどに複雑である。建築というものが車などとは異なり敷地に建つ以上、敷地を分析し、その敷地にあったプランを構築する作業の重要性はご理解いただけたであろう。だから僕は土地の購入の前に建築を設計してくれる建築家を決定することをお勧めする。あまりにも複雑な検討作業は、素人だけで行うにはいくらなんでも難しすぎるし、何と言ってもあとあと後悔することだけは避けなければならない大きな買い物であるのだから。