増井真也日記

略歴
免許登録番号 1級建築士 建設大臣登録 第290771号
1997年早稲田大学理工学建築学科卒業
2001年戸田建設株式会社退社
2001年ますいいリビングカンパニー主宰

「日本の住宅はどうしてこんなに同じものばかりなのだろう。」というのが私が設計を行うようになったきっかけでした。住宅はそれぞれの家族が自分たちのこだわりに合わせて自由に作り上げていくものだと思います。他の工業製品と違い工場での生産が出来ないということからも、本来は個別のデザインが許されて良いはずなのです。「
しかし、現実には建築条件のない土地の取得の困難さという問題や、かつてのずさんな工事による工務店の衰退にともなう工業化住宅の発展によって画一的な住宅ばかりが作られるようになりました。
このような中で、今一度住宅の設計を一つ一つ丁寧に行い、そして工務店として作り上げる。その活動こそが個性あふれる豊かな住宅の生産につながると思っています。そして、そのこだわりを実現させるデザインが豊かな街を作り上げていくでしょう。
私は川口の町で生まれ、川口の町で育ちました。住宅を作るという活動を中心としてさまざまなデザインを街の中にちりばめ、この街をもっと魅力的に変化させ、魅力ある街づくりに貢献したいと考えています。

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最新の日記 3月

2010/3/5

午前中、明日の東京都にある調布市の現場で行われる地鎮祭他について打ち合わせ。確認申請も無事終わり、いよいよ工事に向けて工程管理、施工図面の作成をすすめているところである。この現場は鉄筋コンクリート増3階建ての集合住宅兼住宅である。集合住宅は長屋形式を採用し、それぞれ建物横の路地の部分から直接玄関に入ることができるようになっている。3世帯の集合住宅、そしてオーナー住戸をもつ建築だ。

鉄筋コンクリート造の建築を建てる場合のいわゆるコンクリート工事については、出来ることであれば梅雨の時期は避けたいところである。今回の工程では、6月頭には何とかコンクリート工事を終了できるであろうから、まずまず出だしは順調だ。コンクリートというのは固まってしまえばよいのだが、それまでは何と言っても流動体であるので雨にはめっぽう弱いのである。

午後、各担当者のプロジェクト進行状況打ち合わせなど。

2010/3/2

午前中事務所にて雑務。午後は決算の事務処理など。建築を作る仕事というのはアトリエとしての芸術家的な活動と、工務店としての会社的な活動の両輪を運営しなければならない。工務店的な活動の中では、お金の管理が非常に大切な要素となる。建築の設計だけを行っている皆さんにはご理解いただけないかもしれないが、クライアントにとってお金の管理をしっかりと行ってもらうことは、デザインと同じかそれ以上に大切な問題であり、何よりも人生の中で一度しかないであろう家づくりのご依頼をいただく信用には不可欠なものである。

現場におけるお金の管理、つまりコストに関するマネジメントを行うことは実はそれほど難しくない。家づくりにかかるお金というのは、大きく分けて仮設費、材料費、労務費、そして管理費に分けられる。このように書くとわけがわからないが、具体的に書くと誰でもわかる。

まずはじめに仮設費。これは足場や仮設のトイレ水道電気、作業者の駐車場費など建築に直接かかわらない費用が含まれる。大規模ビルを建てるとなると非常に煩雑な仮設費がかかるので、そのコントロールをすることが難しいが、一戸建ての住宅を作るとなると実はこれ、誰でもわかるレベルの問題である。足場を作るのに何人の職人さんが来るか、足場材量のリース期間が何カ月か、そういうことを一つ一つ考えていけば実は15項目くらいしかないのである。

次にあげたのが材料費。これはちょっと難しいが、ますいいのスタッフを見ていると大体3年程度の経験を積むと木造住宅の材料を一本一本拾い出せるようになるようだ。はじめて家を建てるクライアントが拾い出せるかというとちょっと難しい。でも拾い出した物を見て、そのものが高いとかを判断することはできるであろう。たとえば柱の値段。ヒノキの柱は5000円程度、杉の柱は3000円程度。100本の柱を購入するとなると、20万円の差額となる。ヒノキがいいなという気持ちと、20万円という値段。どちらをとるかの判断は、誰でも理解できる。他にもステンレスの手すりと鉄にメッキをした物の値段の差額、無垢材の階段板と集成材の階段板の差額、一つ一つ説明すればだれでもわかる内容なのだ。
労務費と、管理費はいわゆる人件費の部分である。大工さんが何日作業するかなどという作業日数とそれぞれの職人さんの経費などを合計して求めるわけである。

一軒一軒の住宅のコスト管理は大まかに言って上記のように行われる。私はこの作業をなるべくクライアントと一緒に行うようにしている。それが、クライアントの100%の判断になることは難しいけれど、なるべく多くの判断材料を提供して、一緒に判断することで家づくりの中でいろんなことに納得もできるし、後悔することもなくなると考えているからである。会社の決算の話からだいぶそれてしまったが、とにかくお金の管理は大切だということ。今後もしっかりとやっていきたい。

2010/3/1

今年もいよいよ3月にはいった。三寒四温とはよく言ったもので、2月の寒さがうそのような暖かい日が続くかと思いや、今日はまた肌寒くなった。こういう時期は体調を壊しやすい。ますいいの社員の中でも、先週は中村が体調を崩してしまった。工務店として現場管理をしている以上、やはり外にいることが非常に多いので注意が必要だ。現場の職人さんたちはその辺は非常に上手に管理していて、例えば大工さんが風で寝込んだなんている話はほとんど聞いたことが無いから、やっぱりたいしたものだと思う。

13時、東京都にある葛飾区の家の打ち合わせ。打ち合わせの前に土地を拝見してから、会社のほうにお邪魔した。初回の打ち合わせということで、クライアントの希望にあったデザインの住宅を作る工務店という当社の仕事の流れを一通り説明させていただいた。この葛飾という場所を今回のようにじっくりと拝見したのは初めてのこと。どことなく川口市と似ている雰囲気に愛着を感じる。街には大小さまざまな製造工場が散在し、その合間合間に住宅や商店がひしめくようにたっている。どことなく人情味あふれる町並みで、超高層ビル群が立ち並ぶようなエリアと比べると人と人とのつながりが深く残っている、そんな雰囲気を感じた。

最後に、家作りの希望をFAXにてお送りいただくことをお約束して打ち合わせ終了。この家作りの希望、これが実はとても大切。何を書いていただくかというと、家作りの根幹にかかわるような初元的な御希望を書いていただく。

以前建てたさんかくの家は直角三角形の土地に建つ母と娘のための小住宅である。外部に対して閉じることにより女性だけが住む家に安心して暮らすことができる環境を提供し、かつ光がふりそそぐ明るくて開放的な空間となるよう、住宅の中心には大きな吹き抜けが配置されている。薪ストーブの煙突が貫通するその吹き抜けの上部は、棟屋になっていて3つの壁面がガラスで出来ている。ただでさえ狭い土地を最大限に利用するためにさんかく形となった各階の居室には間仕切りを作らず、その頂点まで視線をさえぎるものは何も無い。その結果、吹き抜けを通って光がふりそそぎ、視線が伸びやかに交差する広々とした空間が出来上がった。母と娘の二人が暮らすこの住宅に玄関は作られていない。代わりに玄関部分には薪ストーブのあるホールが配置されることになった。このホールでは、冬のゆったりとした休日、薪ストーブの炎を見ながら読書をして過ごすことができる。

住宅というものは立体である。プランが決まったからといってその住宅の持つ空間の質というのは一定ではない。どこからどのように光や風を取り込むか、家族の視線が交差するか、日々の生活の動きの中で人がその部屋の雰囲気をどのように感じるか、そういうことは立体的な検討の中で決まっていく。同じ8畳の部屋であっても、その天井の高さによって居心地はまったく異なるものだ。そして、求められる居心地によって再びプランが変更されることもしばしばある。プランの設計図が出来たら、目を閉じてその住宅に入り込んでみよう。玄関を開けて、リビングに入り家族と一緒に食事をする。夜、それぞれの部屋に入って趣味の時間を過ごす。床にはいって休むときの静寂。そして朝目覚めるときの光。模型を眺めながら空想するその暮らしの形こそが、本当の設計図であると思う。そしてそれを作り上げる最初の初元的な条件、それこそがこの家作りの希望である。

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