

今日は川口市の錫杖時にて川口茶道会の秋の茶会の席主を務めさせていただいた。席主というのは、茶会の席を設る主人のことで、お客様をおもてなしするための嗜好を考え、道具を組み、当日はすべてのお客様とお話をする、そんな役割である。僕のような若輩者がなぜこんな大役をいただいたかというと、それはつまりはだんだんと高齢化が進み、引き受けていただけるお方が少なくなってきたからである。かくいう僕もいつの間にやら50歳、もう十分歳をとったとも言える。今日は、袴ではなく十徳を着て席に出た。これまた、ほぼ初めてのことである。
今日の席は、僕が茶道を始めるきっかけとなった鵬雲斎宗匠を思いながらのものであった。特攻隊の生き残りとして、残された命を平和のために使っていきたいという思いの、「一碗からピースフルネス・・・」をのお話はとても共感できるものだった。講演会を聞いて、裏千家に電話をかけて、先生を紹介していただいた入門から16年目、いつの間にか結構な月日が経ったものである。今年の8月14日、鵬雲斎の急逝を知らされた時はとても驚いた。終戦記念日の前日、そして娘の誕生日、まあ関係ないけれど、でも生涯忘れることができない出来事である。軸は鵬雲斎の円相とした。傍に心外無法と書いてある。心の外には何も無し、良いことも悪いことも全ては自らの心のうちで形成されるというような意味であろう。そして真ん中に、円相である。円相は、人と人とのまあるい関係性とか、心の平穏とか、円にまつわるものを表している。
軸に書かれた円相は月を思い出させる。月はどんな時も、誰の後ろにもついてきてくれる。(これは斉藤和義の歌だ。)ついてきてくれて、背中を照らしてくれて、まっすぐと歩む自分を照らしてくれる。そんな月を思いながら、席を作った。香合は、地元の作家の古里蒔絵、月にうさぎである。お菓子は、石川県の小松から行松さんに来ていただいて、現地で温かいお饅頭を蒸してもらった。温かいお饅頭を食べて、心も温まっていただけたであろうか。兎にも角にも、100人以上の、これまで16年の茶道人生の中で出会った皆様にお越しいただいて、本当に感謝であった。